チャオ・タオと「見る」21世紀の中国
9月6日公開のジャ・ジャンクーの新作『帰れない二人』を見た。2001年から18年までの中国各地を、ジャ・ジャンクー監督のミューズ、チャオ・タオと一緒に「見る」ような、壮大な映画だった。
チャオ・タオが演じるチャオは、今回はヤクザの女で相当に突っ張った役柄だ。2001年の山西省の大同では、ヤクザのビンと恋人同士で、仲間と契りの酒を飲んだり、殺された友人の葬式に立ち会ったり。
2人は新疆への移住を考えているが、ある晩ジンは若者の集団に襲われて、チャオが辛うじて救う。それから2人の運命は狂いだす。2006年になり、チャオは長江の客船に乗って三峡ダムのあたりを進む。油断した隙にお金を取られるが、彼女は平気で人をだまして金をせしめる女になっていた。
チャオはビンを追い続けるが、うまくはいかない。バイク・タクシーの運転手を騙したり、列車に乗って新疆まで行き、別の男に誘われたりしながら。そして2018年の正月になり、チャオは故郷の大同にいる。
チャオはこの18年でどんどん迫力が出てカッコよくなり、誰も怖くなくなる。彼女を追って、映画は大同、長慶、新疆と中国全土を見せてゆく。人々は携帯からスマホに変わり、田舎にも高速鉄道が走り出す。20年足らずで変貌した中国を見ながら、変わったものと変わらないものは何かと考える。
最初にチャオ・タオは『青の稲妻』(02)の時のように出てくるが、空に向けて銃を放つ凛とした姿はやはり昔と違う。そして終盤、黒い服を着て大同の家に立つ彼女は、時の流れの重みを全身で感じさせる。
時おりはいる音楽が泣ける。「Y.M.C.A.」や「チャチャチャ」、サリー・イップによる『狼/男たちの挽歌・最終章』の主題歌など、多くの中国語の歌が流れてくる。それを聞いていると、時代が変わり、人々が変わることを感じてしまう。思い通りにいかなかった若き日への愛憎に満ちたノスタルジアが、全編を覆う。
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