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2019年8月16日 (金)

8月15日に『東京裁判』を見る

母の法事も兼ねて九州へ行った。帰宅して故郷でボケた頭にガツンと来るものをと思って選んだのが、小林正樹監督の4時間37分のドキュメンタリー『東京裁判』(1983)。大学生の時に公開されたのは憶えているが、「映画青年」だったはずの私はなぜか見ていない。

同じ小林監督の2年後の『食卓のない家』は当時見ているから、ひょっとすると「東京裁判の記録映像を編集しただけ」と軽く見たのかもしれない。今回見ようと思ったのは、その後「名作」となったこともあるが、4Kスキャン、2Kデジタル修復で昭和天皇の玉音放送がクリアに聞こえる、と読んだから。

確かに冒頭の詔勅は、実によく聞こえる。どこかよそ事のように読んでいる感じがじかに伝わる。「戦局必ずしも好転せず」とか「時運の趣く所堪え難きを堪え忍び難きを忍び」などずいぶん他人任せで気楽な感じ。それでも全体としては日本という国を存続させる意志は不思議と伝わってくる。

実はそれから「東京裁判」の記録映像を編集したものものが始まると思っていたら、それは全体のたぶん2/3で、それ以外の当時の映像も多い。裁判が実際に始めるのは始まって45分くらいたってからで、それまではポツダム会議や原爆投下やマッカーサーの来日などの映像が丁寧に編集されている。

それでも明らかにおもしろいのは裁判が始まってから。被告席の大川周明が挙動不審だと思っていたら、自分の前にいた東条英機の頭をポカリと殴る。東条は苦笑いをし、大川は取り押さえられて別室へ。この場面は見たことがあったが、こんなに克明に(装った?)狂気が見えるとは。

起訴状の朗読があって、28人の被告は全員無罪を出張する。「言及されたすべての罪状に対して無罪です」「無罪を主張します」「無罪」と一人一人が答えるのをカメラはワンカットで長回しで撮る。係のアメリカ人は、1個しかないマイクを懸命に持って回る。それぞれの無罪の表明の仕方、顔つきがぜんぶ違う。

その次に3人の弁護士がこの裁判へ異議を申し立てる。清瀬弁護士はポツダム宣言後に制定した「平和に対する罪」と「人道に対する罪」は罪刑法定主義に反すると主張。驚くのは日本人戦犯を弁護するアメリカ人弁護士が何人もいることで、ファーネス弁護士は公正な裁判は勝利国ではなく中立国の裁判官が行うべきという。

一番びっくりしたのは、ブレイクニー弁護士が国家行為である戦争の個人責任を問うことは法律的におかしいと言い、「キッド提督の死が真珠湾攻撃による殺人罪にあたるならば、我々はヒロシマに原爆を落とした者、指示した者の名前を挙げることができる」と主張したこと。この部分は映像できちんと見えるし聞き取れるが、議事録の和訳は出版時に削除されたという。ここだけでも、この映画を見る価値と必要がある。日本人、必見の映画。

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