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2019年8月12日 (月)

昔の遊びについて考える

六本木の試写の後で見た、サントリー美術館で8月19日まで開催の「遊びの流儀 遊楽図の系譜」展が予想外におもしろかった。キャッチコピーは「浮世の憂さの晴らし方。」で、つまり昔の日本人の遊び=「憂さ晴らし」は何だったのだろうかというもの。

まず「月次風俗図」と呼ばれる四季を描く屏風がある。つまり、花見や月見や雪見、羽子板や夏祭りや秋祭りや雪合戦を描いたもので、これは今でもまだ残っている庶民的なものが多い。

貴族の遊びだと、女性が香の種類を当てる組香に蹴鞠や絵合わせ。男性だと中国から伝わってきたのが「琴、囲碁、書道、絵画」で、江戸時代になると琴は三味線に、囲碁は双六になる。

これらを組み合わせた群像が「遊楽図」で、街の中や家の中でいろいろな遊びをしている貴族たちの群れを描く。国宝の《婦女遊楽図屏風》では踊る女に煙草を吸う女、酒を飲んでつまみを取りながらそれを見る男たちが描かれている。重文の《四条河原遊楽図屏風》は川遊びに芝居見学に猛獣展示など野外の楽しみ。まるで映画の移動撮影のように、さまざまな場所が見られる。

どちらも江戸初期の屏風だが、映画もテレビもネットもなくても十分楽しそうだ。人々が集い、移り変わる自然を愛でて、酒を飲んで歌い踊る。スマホばかり見ている現代人は、こんな感受性をなくしてしまったのではないか。

その後にポスターが気になって見たのが、同じミッドタウンのフジフィルムスクエアの「鹿島清兵衛物語」。こちらは30点ほどの写真からなる小さな展覧会だが、明治中期の写真が何とも美しい。撮られたのは1895年から97年で、まさに映画がフランスやアメリカから日本に伝わってきた時期。

鹿島清兵衛は日本有数の酒問屋の跡継ぎでありながら、写真に狂ってお金を使い過ぎ、鹿島家から離縁された人。特に新橋の芸者で後に水揚げする「ぽん太」を撮ったものは、日本にリュミエール兄弟が送ったカメラマン、ガブリエル・ヴェールが撮った映画に出てくる芸者にかなり似ていて、見入ってしまった。この頃はまだ、そんな酔狂な人生を送る人がいたのだと思う。

いつから日本人は遊びを忘れたのだろうか。

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