« ユニクロのTシャツを着る | トップページ | 排外主義という亡霊 »

2019年8月 2日 (金)

『アルキメデスの大戦』の戦艦大和

山崎貴監督の『アルキメデスの大戦』を劇場で見た。戦艦大和が沈没する瞬間の映像が見られると聞いたから。もちろん私は右翼でも軍事オタクでもないが、日本人が戦時中に作った戦艦や飛行機の話にはどうも惹かれるところがある。

この映画の冒頭には、1945年4月に大和が無数の米軍機にやられて沈没する様子がたっぷりと描かれている。大和からいくつもの砲弾が発射されるが、動き回る米戦闘機にはほとんど当たらない。その一方で大和には飛行機から放たれる魚雷や爆弾が当たり、大和は破裂してゆく。そのたびごとに海に放たれる日本兵たち。

大和は次第に傾き、横転する。海に放り出された無数の兵士たち。悲惨も何もなく、要するに動き回る戦闘機の前に巨大戦艦は意味をなさない、そんな図だった。

それを10分ほど見せた後に、映画は1933年に戻る。満州事変を起こし、国際連盟を脱退した後の海軍で、次なる装備は巨大戦艦か空母かで議論が行われる。空母派の山本五十六(舘ひろし)は、巨大戦艦の見積もりが甘いことを見破るために、東大中退の数学の天才、櫂(かい、菅田将暉)を連れてくる。

映画は次の会議までの限られた時間に、櫂が相手の見積もりの欠陥を示す計算を終えられるかというサスペンスで引っ張る。見ている側は、これはそうでないと映画が成り立たないことがわかるので、櫂が勝つと知りつつそれを見守ることになる。櫂の付き人となった田中(柄本祐)、恋人の鏡子(浜辺美波)、大阪の造船所社長(鶴瓶)などの人情溢れる人々がそれを支えるのは山崎映画の定番。

予定通り櫂の驚異的才能と踏ん張りで空母派は勝つが、戦艦派の中将(田中泯)は櫂に親しみを抱き、取り込んでゆく。そして大和の完成で映画は終わる。最初に役に立たずに終わった大和の最後を見てしまったこともあり、ドラマの中心となる櫂の活躍がどうしても茶番にしか見えなかった。舘ひろしはどう見ても山本五十六は無理だし、海軍大臣の小林克也や戦艦派の少将・橋爪功、空母派の中将・國村隼もみんな冗談にしか見えない。

菅田将暉、柄本祐、田中泯がかろうじて人情ドラマに終わらない強さを発揮していた。もちろん、エンタメとしては2時間10分退屈させないが、才能ある山崎貴監督は、もっと別の方向を目指してもいいのではと思った。

|

« ユニクロのTシャツを着る | トップページ | 排外主義という亡霊 »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« ユニクロのTシャツを着る | トップページ | 排外主義という亡霊 »