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2019年9月11日 (水)

オルセー美術館のベルト・モリゾ展

今回はベネチアの最初でパソコンやスマホでの失敗があったせいで、パリで何をするか考える時間がなかった。とりあえずパリに着いてネットで検索してみると、オルセー美術館で9月22日までベルト・モリゾ展をやっていた。この女性画家にはちょっと思い入れがあった。

新聞社で2年近くの文化部記者時代に、この画家の絵について細かい解説を書いたことがある。日本で一番の専門家である早大の坂上桂子教授に話を聞き、本を2冊読んだ。そこで選んだのが《コテージの室内》というベルギーの美術館所蔵作品だった。損保ジャパン美術館で個展があった時で、ポスターに使われた絵だった。

記者は記事を書くために1、2週間ほどにわか勉強をし、いきなり専門家に話を聞くことが多い。それだけで長い署名記事を書くのだから大胆にもほどがあるが、それでも書いた画家や作品は今でもよく覚えている。

今回のオルセーでのモリゾの展覧会は、フランスの国立美術館では1940年代以来という。確かに、モリゾの個展はフランスでは聞いたことがなかった。オルセーやマルモッタンなどで数点見るだけ。今回はさすがにオルセーだけあって、世界中から作品を集めた大個展で、日本も国立西洋美術館やブリジストン美術館などから数点出ているし、アメリカの美術館からも多い。

多くの絵から浮かび上がるのは、友人や親戚や娘やメイドなど、女性たちを繊細に描く優しいタッチ。室内でくつろぐ姿や働く姿を親戚もメイドも隔てなく描く。《コテージの室内》はジェルジー島での休暇中の娘ジュリーを描いたもの。最後の印象派展が開かれた1886年に描かれたもので、テーブルクロスと娘のドレスとカーテンの白が呼応し、窓の向こうの海とつながっている幸福感に満ちた絵だ。

モリゾは第一回印象派展に参加した唯一の女性画家。モネは個性的な美女の彼女をモデルとして10点も描いている。しかしモリゾの絵は、モネやマネのような確信犯的な新しさではなく、普通の家庭を描きながら、印象派らしい光の表現を自然に見せる。その温かみは見れば見るほど身体的に伝わってくる。若い頃コローに師事したことがよくわかる。

ホテルからオルセー美術館にどうやって行こうと考えて、近いのに地下鉄やバスが不便なので結局Uberウーバーを呼んだ。3分でやってきて10分で到着。9ユーロだから1200円ほど。帰りはわざと10分ほど歩いて83番のバスに乗った。日曜のせいかバスが来なくて結局1時間近くかかったが、パリの夕方を時間をかけて移動するのは、展覧会の後ではちょっと贅沢な気分。

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