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2019年9月30日 (月)

『閉鎖病棟』に涙する

帚木蓬生の小説『閉鎖病棟』がかつて「泣ける」と話題になったのは記憶のどこかにあるが、読んでいない。この小説をもとにした映画が11月1日に公開されるというので試写を見たが、泣いてしまった。

映画は閉鎖型の精神病棟に生きる人々を描く。中心となるのは、元死刑囚で生き延びてしまった秀丸(笑福亭鶴瓶)と幻聴に苦しむ元サラリーマンのチョウさん(綾野剛)、義父からDVを受けた由紀(小松奈菜)の3人で、それぞれが言い難い過去を持ちながら病院で暮らす。

チョウさんと由紀は、見るからに秘めた過去がありそうな暗い顔をしている。そのうえ、チョウさんには妹がいて見舞いに来ると認知症の母を施設に入れて実家を処分しようと言うし、由紀の義父は病院に現れて連れ戻そうとする。

それに比べると、秀丸は落ち着いた感じで毎日陶器を作っている。しかし観客は彼が死刑に失敗したことを冒頭の映像で知っている。だから何かを抑えて平静を保っているようにも見える。

終盤に乱暴者の重宗(渋川清彦)が由紀を襲うまでは、たいしたドラマはない。しかし、この3人を中心とした患者たちのちょっとしたやり取りがなかなか見ごたえがある。

週末になると家族のもとに外泊すると楽しそうにでかけるサナエ(木野花)はどこか痛々しいし、まるでオウム教信者のようなヘッドギアをした2人の若者(駒木根隆介と大窪人衛)も愉快そうに見えてそうでもない。そのほか、いつもカメラで写真を撮る男、死亡記事をノートに写す男、読経を繰り返す男など、出てくる人ごとに過去を考えてしまう。

医師は高橋和也、看護婦長が小林聡美、そのほか患者の家族に山中崇や根岸季衣、弁護士にベンガルなど随所に芸達者が抑えた演技を見せる。私は特に鶴瓶とベンガルのあえて感情を見せない演技がいいと思った。

そしてラストの暴力事件の後に、2度、3度泣ける場面が仕込まれている。そして3人が閉鎖病棟を出てからのその後が示される。登場人物たちの設定を始めとして少し作り過ぎた感のある古いタイプの脚本だし演出もそうだが、こういう映画も悪くない。

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