ベネチアからパリへ
ベネチアからパリに着くと、肌寒い。既にベネチアでも終盤に急に寒くなった。最初の頃は最高が32度で思わず水着に着替えて海で泳いだが、終わりの頃は最高が24度だった。パリに来たら19度くらい。朝は10度。
寒く感じるのは気温だけではない。雰囲気が全体に冷たく、クールな感じが空港からタクシーからホテルまで、すべてに広がっている。あのイタリアのお祭りのような賑やかな人間たちはここにはいない。
今回ベネチアで泊まったホテルは、ある意味でかなりアナーキーだった。2階建てで8室しかない。部屋を掃除するロシア人女性エレナが、朝ご飯も用意する。そしてそれが終わると昼には家に帰る。ホテルの番号に電話すると彼女が出るから、転送しているのかもしれない。
午後も夜も受付には誰もいない。だから毎日重い鍵を持って歩くことになる。玄関は鍵かコード番号がないと入れないが、時に開いたままのこともある。すると外部の人間も部屋の前までスルスルと来られることになる。
イタリアのホテルの朝食はどこもシンプルだが、普通は少なくとも果物は数種ある。ここは2日に一度くらいスイカがあるだけ。コーヒーもまずいので紅茶を飲む。エレナを見かけたらカプチーノを頼むとまともなものが出てくるが。ゆで卵もある日とない日がある。いつもあるのはパンとヨーグルトとチーズにハムくらいか。
リド島のホテルはどこもかなり古くなっているが、改装するお金がないせいか、そのまま。箪笥が開きにくかったり、椅子が壊れそうだったり。実際に毎年のように廃業するホテルが出てくる。Hervetiaがそうだし、Byronもリゾートマンションになるかもしれない。とにかく夏しか営業できないから、『ベニスに死す』で有名なオテル・デ・バンさえ再開のメドがたっていない。
一方、2年前からパリで泊まるホテルは、3年前に住んでいた13区のアパートのすぐそば。その前を通るたびに観察していた。泊まってみると、快適そのもの。全体に北欧家具の感じでシンプルで美しく機能的。朝食はパン、コーヒー、ジュース、ヨーグルト、果物、すべて美味ですばらしい。スタッフは暖かく、親切そのもの。原稿を書くのにこれほど便利なホテルはない。
宿泊客はなぜか北欧の30代、40代のブロンド美女が多い。だいたい女性グループ。時々レズのような2人もいる。そんな中で中年のアジア人が一人で静かに朝食を取る。
13区は観光地が皆無なので、まず安全。オルセー美術館やポンピドゥー・センターに行くのに地下鉄に乗るだけで緊張する。60に近くなって、なぜかいつも身の危険を感じる。時間がかかってもできるだけバスに乗る。観光客がいないとまずかったり高すぎるレストランはすぐ潰れるから、レストランは良心的な店ばかり。
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