『ブルーアワーにぶっ飛ばす』の快い違和感
10月11日公開の箱田優子監督『ブルーアワーにぶっ飛ばす』を見た。この監督の第一回長編だが、CMの世界で活躍している人らしく、この作品はツタヤのクリエーターズ・プロジェクトの一環で生まれたという。
既に上海国際映画祭のアジア新人部門で最優秀監督を取り、香港や台北などいくつもの映画祭に出ている。最近ここで触れた『僕はイエス様が嫌い』や『暁闇』がそうだが、海外に出る日本の新人監督はみんな「尖っている」ことが条件だ。日本の若手の多くが興行を気にしてウエルメイドなドラマを作るが、それではまず国際映画祭には出られない。
この映画は先に書いた2本に比べても、ゴツゴツの違和感がある。冒頭は少女が田舎で一人遊びしている映像。それから主人公の砂田(夏帆)が不倫相手(ユースケ・サンタマリア)と別れて、朝方に優しい夫(渡辺大知)の待つ家に帰るシーン。
砂田は言いたい放題やりたい放題のようなCM監督だが、現場では怒った大御所俳優(嶋田久作)をうまくなだめたりとソツがない。そこに突然友人のキヨ(シム・ウンギョン)が車に乗って現れる。ちょうど母から病気の祖母のお見舞いの電話があり、2人で茨城の砂田の実家に行くことに。
時おり、画面にヘンな音がしたり、音楽が流れたり、小さい頃の映像が現れたり。田舎のスナックでみんなに合わせる砂田の心を見透かすママの声の異様な大きさ。まるで不安定な砂田の心象風景のよう。
実家にはキジの剥製や木彫りの鷹が飾られて、父(でんでん)は天狗のお面を磨いたり、日本刀を振り回したり。母(南果歩)はテレビに話しかけたり、キヨの納豆の混ぜ方を褒めたり。中学の先生の兄(黒田大輔)は、ヘラヘラ笑って気持ち悪い。無邪気な笑顔のキヨは楽しそうにカメラを回し、その場の緊張を和ませる。
キヨに加えて高齢の祖母が登場することで、トーンは変わる。祖母は「ゆか」と名前を読んで喜び、砂田に爪を切ってもらう。キヨのカメラで祖母を写す砂田。
田舎嫌いの業界人が祖母との再会とカメラによって自分の原点を見る、と書くと図式的に見えるが、この映画はその過程を敢えて不器用に見せる。それを夏帆がシム・ウンギョンというもう1つの自分との掛け合いで地に近い感じで演じる。ベテラン脇役たちの厚みのある演技と撮影の近藤龍人と照明の藤井勇の落ち着いた色調の画面にも支えられて、明らかに飛び抜けた感じの第一回監督作となった。
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