さて、自分はどうするか?
「あいちトリエンナーレ」を巡って、私が所属する某学会で声明を出すことが決まった。文化庁の補助金全額不交付に対してである。理事会で議論がなされたが、いろいろな意見があるものだと改めて思った。
もちろん、根っからの反体制派がいる。安保法案だろうが、沖縄の基地移転だろうが、「正義」を求めていつも反対する人々だ。私の考えや生き方もそれに近いが、あまりよく知らないことには口を出さない方がいいだろうとも思う。しかし、自分に関わること、自分が知っていることについておかしいと思ったら、声をあげることにしている。
それから、もっと一般的な「庶民感情」に近い考えをする人もいた。つまりそもそも「あいち」で問題となった「芸術の不自由展 その後」展自体が、あまり一般の賛同を得られないものであり、それを企画した芸術監督がまず責められるべきという考えだ。
私の両親が生きていたら、このような考えだったと思う。昭和天皇の肖像画が燃える映像には、私の父親は激怒しただろう。そういえば父は韓国も嫌っていたので、慰安婦像の展示も不快だと思っただろう。かつて私の従姉が在日コリアンと結婚した時、それと知らずに結婚式に出席した父は、途中でアリランの歌が出てきて怒って帰ってきたはず。
それより何より、父は津田大介氏の「茶髪」も嫌いだったに違いない。彼の持つ雰囲気は保守的な人々には受け入れられない気がする。「あいち」をめぐる一般の世論調査があるとしたら、「芸術の不自由展 その後」展や津田氏に違和感を感じる人の方が多いかもしれない。
ここでも「朝日」の「論座」でも書いたように、私は津田氏と愛知県知事の3日目での中止決定には反対だが、文化庁の補助金不交付にはその十倍くらい怒っている。それはかつて自分が展覧会や文化イベントの企画を仕事としていたことが大きいが、若い頃に自分が国際交流基金で助成金の事務をやり、今は文化庁関連の複数の助成金の審査をしていることもある。自分に関わることだと思う。
外部の専門家による委員会で決定した助成を、文化庁の事務方がゼロ査定するのはたぶん前例がない。知り合いの大学教授は文化庁関連の委員を2つやっていたが、今回の文化庁の不交付決定後、すぐに辞めると通知したらしい。
さて私はどうするか。実は30件ほどの申請書を綴じた分厚いファイルが送られてきて、書類審査は既に終えている。送り返す期限は今日である。私が思い出すのは、昨春の日大アメフト事件の時のことだ。教授会でみんなで署名しようと訴えたが賛同を得られなかった。結局、私はそれ以上の行動をしなかった。
さて、今回はどこまで動くか。ベネチアから帰ってきて多忙な日々が続いたが、今朝それが途切れて、じっと考えている。
| 固定リンク
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 還暦を過ぎて髪は増えるか:その(2)(2024.12.08)
- 映画ばかり見てきた:その(2)(2024.11.30)
- 映画ばかり見てきた:その(1)(2024.11.14)
- イスタンブール残像:その(6)(2024.11.08)
- 高木希世江さんが亡くなった(2024.10.26)
コメント