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2019年10月24日 (木)

『脱ブラック部活』を読んで

先日、「朝日」の石飛徳樹編集委員が樹木希林さんにインタビューした『この世を生き切る醍醐味』を読んだが、また「朝日」の記者が書いた新書を読んだ。中小路徹編集委員著『脱ブラック部活』で、なぜ読んだかというと、今年は私の学生が企画する映画祭のテーマが「スポーツの光と影」だから。

前半は現在の中学や高校の部活がとんでもないことになっていることを具体例を挙げて見せ、後半はその処方箋と最近の動きについて述べる。いくつも驚くことがあったが、何よりも1983~2011年に、運動部活動中の死亡事故が全国で870件あったという事実にびっくりする。中学の運動部活動で亡くなった生徒は2015年も2016年も11人ずつ。

中学の部活で死ぬなんて、絶対にありえない。自分の頃を考えてもおかしいと思っていたら、運動部加入率がこの50年でどんどん増加していることが書かれていた。

「東京オリンピックが開催された1964年は中学が45%、高校が31%だったのが、1977年には中学で61%、高校で39%と増加した。1996年には中学で74%の最高値に至り、高校も49%に。高校は2001年には52%まで上がった」。1977年は私が高校に入った頃だが、九州の田舎の中学で部活(かつては「クラブ活動」と呼んでいた気がする)は、半分もいないくらいだった。

今は中学で7割、高校で半分以上が部活をしていることになる。なぜそんなに増えたのか。「戦後になっても、戦前からスポーツが学校で発達したことで底流してきた勝利至上主義、精神主義、集団主義を基調としながら、1964年の東京オリンピックが部活動のブラック化を強めるきっかけになったと考えられる」

「1970年代の半ばからは部活動にはさらに別のものが求められ始めた。学校の荒廃や校内暴力が問題となり、部活動は生徒を管理し、非行を防止する手段として利用された。その結果、部活動は生徒全員が加入すべきもの、教師もすべてが顧問として従事すべきものとなり、運動部活動は大きな規模となった」

「スポーツ推薦」も問題だ。「スポーツ推薦を目指す生徒と親は、その競技さえやっていればいいとスポーツにすがり、文武両道を軽視することがある。/そして、部活動で好成績を残したいと、長時間の活動も受け入れる」

スポーツ庁の2016年の調査だと、1週間の中学生の県別部活時間は、一位の千葉県で平均18時間19分。最下位の岐阜県でも10時間57分。これは長すぎる。日本の中学教員の勤務時間は週53.9時間でOECD参加34か国・地域で最も長い。なんということだ。「家族で英国に長く暮らした経験のある母親が「部活漬けの子供は企業戦士の父親と同じに見える」と取材で語ったことがある」

この本を読んで、「スポーツ体質」がこの国に染み込んでいることを知った。ラグビーのワールドカップとか、来年のオリンピックで、その傾向はもっと強まるかもしれない。私は小学3年生から剣道を習い、中学ではキャプテンで二段を取ったが、その後はスポーツ嫌いになった。今はスポーツクラブで週に一度汗を流すが、スポーツを見ることはまずない。

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