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2019年10月 3日 (木)

荻生田文科大臣のこと

勤務する大学の教員ロビーで、ある非常勤講師の方が「萩生田文部科学大臣は、政府に文句を言う文化人をつぶすために安倍首相が送り込んだんじゃないですか」と言っていた。彼の就任当初は加計問題の当事者を文科大臣にするとはおかしいという意見が出たが、確かに真意はこちらかも。

安倍総理にとって加計問題は既に終わった話で、今更荻生田氏を大臣に据えてさらに蓋をする必要はない。首相がいらだっているのは、例えば是枝裕和監督が『万引き家族』でカンヌでパルムドールを取った時に、政府の「祝意を伝えたい」という招きを断ったことだ。この映画は文化庁の製作助成金を得ていることもあって、保守派から非難された。

今回の「あいちトリエンナーレ」のように助成額を内定した後で取り消しができるとすると、できた映画を見てから「内容が異なる」として助成金を断ることが可能ということになる。当然ながら申請書の段階ではシナリオはできており、スタッフ・キャストもほぼ決まっているが、映画そのものはできていない。

映画はシナリオ通りに撮られるとは限らないし、編集の段階で変更もありうる。結果としてどのようなテイストの映画になるかはわからない。ましてやそれがどのような評価を受けるかや観客を集めるかどうかは「誰も知らない」。美術展の何倍も不確定要素を含む。だからできた後に評判や世論を見ながら「内容が異なる」と言うことができたら、大変なことになる。

去年の映画『焼肉ドラゴン』に対して、公開時に「こんな在日が作った映画に文化庁が助成するなんて」という抗議電話がかなりあったと聞いたことがある。たぶんこれはネトウヨや反韓の人々だろうが、同じ思いの政治家もいたかもしれない。

10年ほど前に『靖国』という中国人監督のドキュメンタリー映画が文化庁の助成金をもらったことが試写の段階で雑誌で話題になり、国会議員の稲田朋美氏などが反対したこともあった。こんな作品は今後は完成後に助成取り消しになる可能性がある。

さらに私が危惧するのは、文化庁や芸術文化振興基金の補助金の募集要項に萩生田大臣が「公共の利益に沿う」「公序良俗に反しない」といった一文を押し込むのではないかということだ。そうすると『万引き家族』も審査の段階で落ちるかもしれない。今の政権はそういうつもりだということをしっかりと認識した方がいいかも。

前川喜平氏は東京新聞のコラムで萩生田大臣の部屋には教育勅語が貼ってあったと書いていた。ありえない話だが、彼が文部科学省のトップに収まっているのが今の日本の現実である。とりあえず自分としては、こうした動きに対してあらゆる機会に反対の意を表明していこうと思う。

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