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2019年10月29日 (火)

それでも東京国際映画祭に行く:その(1)

東京国際映画祭についてはこの10年間悪口ばかり書いているせいか、昨年に引き続き、今年もオープニング・パーティの招待は来なかった。文化庁映画賞の方には招待されていたので入ることは可能だったが、それは遠慮してラヴ・ディアス監督の新作『停止』を見た。

白黒で4時間48分、ほとんどが固定のロングショット、少ない会話という、観客には拷問のようなスタイル。だが、今回は近未来というので見たいと思った。2034年のフィリピンが舞台で、火山爆発で東南アジアには昼間も太陽が差さない。群像劇だが中心となるのはニルヴァナ・ナヴァラ大統領で、失言が多く親しみやすい感じは現在のドゥテルテ大統領のよう。

彼の側近には特殊部隊を率いる2人の女性、マーサとマリッサがいる。この2人は実は愛し合っているが、マリッサは高級娼婦のハミーに心が移りつつある。大統領は1人で暮らしているが、認知症の母の見舞いに行ったり、西洋人男性のメネンという恋人と会ったりする。

ハミーは元は大学の歴史学の教授だが、精神を病んでおり、ジーンという精神科医のもとに通っている。ジーンは「記憶のない国」という本を書いて大統領を怒らせてしまい、消される。大統領は8月9日の長崎原爆投下の日に、「黒い雨」と称して全国の不満分子が多い地域に毒ガス入りの雨を降らせる計画を練っている。

そんな危険な大統領をねらう一味のフックは教会に隠れているが、そこの神父は処分される。フックは大統領がホテルでマーサやマリッサと誕生パーティの時に狙撃を企てるが失敗し、諦めて政治よりも不幸な子供の世話の方に向かう。マリッサはハミーと付き合い始めて大統領に疑問を持ち、殺そうとして失敗。無事に生き延びる大統領はある日、ひょんなことから町の不良たちからボコボコにされてしまう。

5時間近い映画のあらすじはそんなところだが、日が全く照らないのでとにかく暗く、雨の多い街の中で立ち尽くす人ばかりが出てくる。そして怪しい人物にはドローンが近づいてきて、IDカードを見せると立ち去る。大統領の周りにはいつもドローンが2個飛んでいるし、ジーンが拉致された時は、頭上に3、4個のドローンが集まったかと思うと、四方から大勢の警官が寄ってきた。

そうか、怪しい人間はこのようにドローンが取り締まるのかと思うと、かなり怖くなる。こんなブログを書いていると、朝、窓にドローンが近づいてくる日が来るかもしれない。今朝の天気はこの映画のように暗いので、そんなことを考えた。いずれにしても超弩級の1本を初日に見てしまった。

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