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2019年11月16日 (土)

『こんな雨の日に』を読みながら:続き

是枝裕和著『こんな雨の日に』は映画『真実』の製作過程をつぶさに追ったものだが、普通はこんなに手の内は明かさないだろう。絵コンテを載せる本はよくあるが、俳優への手紙やその返事、プロデューサーからの監督が書いた脚本への細かな注文なども全部日本語で載っている。

あるいは、あるフランス人プロデューサーに対しては「もうこのプロデューサーとはこれっきり」と書かれている。たぶん日本語だからどうせ読まれないと思っているのかも。もちろん、合作という貴重な体験の記録をつぶさに残しておきたいとも思ったのだろう。

例えば主演を前提としたカトリーヌ・ドヌーヴへのシナリオ準備のための長いインタビューが載っている。自分のキャリアに影響を与えた監督として、「ドゥミ、トリュフォー、テシネ」と言う。オゾンとデプレシャンに対する評価も的確で実におもしろい。自分が遺伝子を受けついた女優としては「ダニエル・ダリュー」、自分に似た若手は「ケイト・ウィンスレット」「ナオミ・ワッツ」

「ジャンヌ・モローについては?」という怖い質問には「インディペンデントな作品をもっとも象徴する女優ではないかと思うわ」というクールな答え。どうもフランスの女優をあまり評価していないようで、ジュリエット・ビノシュとの初共演は大丈夫かと心配になる。

実際、世界販売を担当するワイルド・バンチのバンサンさんに脚本を読ませると「弁護士を用意しておいたほうがいいよ」「ここに記されているエピソードがカトリーヌ自身の人生とかなり重なっているから訴えられた時のために」

2度目のドヌーヴとのミーティングでは「「家はパリじゃないと困るわね」が第一声」。そしてプロデューサーの福間さんに「あなた字が小さいわね」「なにこれどこの?MUJI?何ミリ?」とお喋りがどんどん転がっていき、戻ってこない」

もちろん合作ならではの違いも興味深い。「撮影は1日8時間延長なし。8×5で週40時間労働。土・日は完全に休み。このペースに慣れなくてはいけない。/完投できるのに100球で交代を告げられるピッチャーはこんな気持ちなのだろう。しかし、健全であることは間違いない。これならシングルマザーも映画の仕事ができる」

「この国では日常の地続きに映画がある。観ることも、撮ることも。日本はよくも悪くも祭りで儀式。イン前にお祓いしたり」「20時前に終わって、スタッフはみな家に帰って家族と晩御飯を食べる人が多い。「寝食を共に」という価値観は基本的に存在しない。/日本みたいに朝・昼・晩・夜食と4回も一緒に弁当を食べることはありえない(残業代が高すぎる)」

今日はここまで。

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