『iー新聞新聞記者ドキュメントー』を見る
『iー新聞記者ドキュメントー』を劇場で見た。森達也監督だし、プロデューサーは劇映画の『新聞記者』の河村光庸だし、何より東京新聞の望月衣塑子記者のドキュメンタリーだから早く見たかった。先日終わった東京国際映画祭の「日本映画スプラッシュ」部門で最優秀賞を受けていたことも、さらに興味を掻き立てた。
113分、一瞬たりとも画面から目が離せなかった。かといって何か新しいことがあったかというと、だいたい想像していた通り。しかし見入ってしまったのは、走り続ける望月記者の勢いに乗せられたのか。
映画は今年の初めから半年ほどの望月記者の取材活動を追う。辺野古埋め立ての現場に行って話を聞き、写真を撮って、それを菅官房長官にぶつける。長官は「法令に則って実施しております」「それは沖縄防衛局に聞いてください」「その質問には答える必要がありません」と、とぼける。
すごいのは30秒に1度くらいマイクで「早く質問に移ってください」「質問は手短に」と邪魔が入ることで、後半で声の主は上村報道室長だとわかる。私は報道室長名の文書で望月記者を排除するよう官邸記者クラブへ通告したことはニュースとして知っていたが、テレビを見ないのであの滅茶苦茶な声は知らなかった。
これに対して、社内の幹部に携帯電話で抗議している時の望月記者の声が一番大きい。ほかにも社内で揉める時があるが、やはり新聞社では一番の敵は社内にあるのは、私も体験したことだ。
それでも望月記者は走る。キャスター付きの大きなキャリーバッグを左手で転がし、右肩には大きなトートバッグ。議員会館内で迷ったり、遅れたりも多い。辺野古以外にも、TBS記者にセクハラを受けた伊藤詩織さんや、森友学園問題の籠池夫妻、日本共産党の志位委員長、元文科次官の前川喜平氏などを追いかけて話を聞く。
映画に撮られていることを意識してか、きちんとメイクもしているし、服装やバッグも毎回変わる。タクシーの中で小さい娘と仲良く話す場面もある。あるいはハンバーガーに食らいついたり、大きなケーキをばくりと食べたり。その一方で官邸の記者会見に入ろうとする森達也監督は、どうやっても入れない情けない自分の姿を見える。
2時間近いのに、飽きないように工夫されているのは森達也監督の力だろう。しかし終盤に出てきた、フランスでナチスに協力した女たちを解放後に坊主頭にして引き回す写真は唐突過ぎた。最後にはもっと違う何かを期待していたが。
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