『冬時間のパリ』の描くインテリたち
オリヴィエ・アサイヤス監督は、映画ごとにテーマやスタイルを変える才人である。今年のベネチアのコンペで東京国際映画祭でも上映された「WASP ネットワーク」WASP Networkは、90年代のマイアミでキューバの民主化運動をするキューバ人たちの話だった。
「WASPネットワーク」のように、彼は時々かつての学生運動や抵抗する人々のドラマチックな生き方を振り返るようにして描く。かと思うと12月20日公開の新作『冬時間のパリ』のように、現代のフランスの日常を巧みに切り取った映画も作る。今作はとりわけ、作家や出版社や女優といった、いわば業界というか、パリのインテリ層を描いた。共通するのは、懸命に生きながらもどこか自信が持てない男たちの姿かもしれない。
原題はDoubles vies=「二重生活」。主要な登場人物が結婚相手以外と関係を持つ。いかにもフランス的なダブル不倫の世界だが、みんなそんなもんだとばかりに平気で生きている。
編集者のアラン(ギョーム・カネ)と作家のレオナール(ヴァンサン・マケーニュ)が議論している場面から始まる。出版のデジタル化をめぐる話だが、2人はそれからランチに出かけ、実はレオナールの新作の出版をアランが断る話だったのだと気づく。
この出だしに始まって、映画のほとんどは食事やパーティや情事での議論ばかり。それも出版のデジタル化の今後を巡る話がほとんどなのだが、どれにもそれぞれの個性が出ていておもしろい。アランは紙の印刷物のこだわっているが、デジタル化への対応を迫られている。
彼はデジタル出版の責任者として雇ったロールと関係を持っているが、そのロールには女性の恋人がいた。アランの妻は女優のセレナ(ジュリエット・ビノシュ)だが、彼女は何と作家のレオナールと6年前から関係があった。
知的でいつも微笑しながらもすべてを見通しているようなアランと、動物的ですぐに怒り出すが何とも憎めないレオナールの組み合わせがいい。そのうえ、彼らはセレナを取り合っているのだから。表向きは出版の未来を案じながら、現実には女のことばかり考える。行きつ戻りつしながら。
女たちは、レオナールを捨てるセレナもアランのもとを去るロールもレオナールの妻で政治家秘書のヴァレリーも、ほとんど瞬間的に判断し、迷わない。日本流に言えば、「男まさり」に我が道を突き進む感じ。
このてんやわんやの最後に恩寵が訪れる。何だかエリック・ロメールのような映画だと思ったら、監督はこの映画はロメールの『木と市長と文化会館』も着想を得たという。それならよくわかる。年末の忙しい時に是非。
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