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2019年12月18日 (水)

映画祭「スポーツの光と影」を楽しむ:続き

学生企画の映画祭が明日まで開催中だが、私もこの機会に何本も見る。選ばれた映画は当然学生たちは見ているが、私は見ていないものもあるから。この映画祭には「スパルタ」を含む題名の映画が2本ある。『スパルタ教育 くたばれ親父』(1970)と『スパルタの海』(1983)。

『スパルタ教育 くたばれ親父』は石原裕次郎の原作で、基本的には暴力を伴うスパルタ教育を容認している内容だ。学生運動を行う高校生や暴走族をスポーツで鍛えた大人が蹴散らす。思想的にはとんでもないが、さすが日活の黄金期を支えた舛田利雄監督の演出は実に痛快で十分楽しめる。

今回初めて見た『スパルタの海』は、完成してから戸塚宏校長が逮捕されて20年ほどお蔵入りになった作品。今見ると、これまたベテラン西川克己監督らしく映画としてはよくできているが、中身はかなり微妙で興味深かった。愛知県にある(今も)戸塚ヨットスクールには、親や学校の手に負えなくなった少年少女が送り込まれる。

校長役の伊東四朗を中心に、数人のコーチが朝から晩までつきっきりで食事やスポーツ訓練をさせる。ボート乗りや浜辺での腕立て伏せ、困った子供向けの座敷牢など設定がうまく、活劇として見ていて楽しい。

何度か両親が出てくる場面がある。子供を連れてきたり、様子を見に来たり。とりわけ平田昭彦と小山明子の夫婦が抜群で、平田は東大卒(実際にそうだ)のエリート会社員で、妻役の小山は女子大卒で外交官一家の出身。映画の冒頭にこの2人の息子が家で大暴れして、ヨットスクールのコーチたちが迎えに来るシーンがある。

気の弱い平田はヨットスクールで大丈夫かと心配するが、小山は全く気にしない。終盤に立ち直った子供を迎えに行って、小山は「この子は前は成績がいつも一番だったので、これから東大に行って外交官になります」と言い放つ。結局、子供は家に帰った後に、ヨット乗りになりたいとヨットスクールに戻ってくる。

ここで描かれているのは、親が自分の希望を押し付けて、子供がおかしくなるという、現代にも通じるパターン。暴力を置いておけば、真剣に子供と向き合って信頼を得てゆく伊東四朗は極めてまっとうに見える(ように撮られている)。

数日前に、元農水次官(76)が息子(44)を殺した事件に、実刑判決が出たが、私はすぐにこの映画のことを考えた。

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