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2019年12月20日 (金)

映画祭「スポーツの光と影」を楽しむ:3回目

普通、スポーツ映画は『ロッキー』にしても『炎のランナー』にしても、「最後に勝つ」ことが一番のカタルシスだ。ところが今回の映画祭の上映作品はそういう真っ直ぐな映画は1本もない。

『おれについてこい!』(1965)は、東京オリンピックでバレーボール女子を金メダルに導いた監督の大松博文の著書が原作。「鬼の大松」と呼ばれた監督が主人公だから、さぞものすごいスポコンもので、最後にはオリンピックで勝つシーンがあるのだと思っていた。

まず、大松を演じるのがハナ肇なので、出た瞬間に笑ってしまう。ところが彼が実にまじめで真摯に選手たちと向き合う。もちろん回転レシーブ(懐かしい!)を始めとして、監督の特訓はある。真冬の訓練で冷水を浴びせるようなしごきもある。

ただし「体罰」という感じはないし、それ以上に監督が選手たちのことを心配している。お見合いをするという選手には「それもいいだろう」と勧め、1962年に世界選手権を制してからは2年後のオリンピックまで続けるかの判断を選手たちに任せる。いつも妻や2人の子供の心配をしている。

映画は東京オリンピックの決勝戦の日の朝から始まり、6年間を回想形式で見せてゆく。9人制バレーから世界水準の6人制への移行を決意し、体育館もない状態で練習を始める。それから起き上がり小法師から回転レシーブを思いつき、特訓が始まる。そして世界選手権でソ連を破り、東京オリンピックを迎える。

試合のシーンは世界選手権までは写真構成だし、最後の東京オリンピックの決勝に至っては、勝った瞬間のラジオ放送のみ。出てくるのは監督や選手たちの練習の苦労と精神的な苦悩ばかり。ところがベテランの堀川弘通監督のユーモアを交えた巧みな演出に最後には思わず涙が出てしまった。

想田和弘監督の『ザ・ビッグハウス』(2018)は、全米最大のミシガン・スタジアム(通称「ザ・ビッグハウス」)を描くドキュメンタリー。ミシガン大学の試合を2回追いかけるが、こちらも試合自体は全く写らない。放映権の関係かもしれないが、見せるのはスタジアムの掃除や売店や医務室などの人々が準備をし、後片づけをする様子が中心だ。

そこには大統領選のキャンペーンも、宗教団体の売り込みも、大学の寄付者向けのパーティも写る。最後まで見ていると、全体としてアメリカという国が浮かび上がってくる。

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