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2019年12月 6日 (金)

『ドクター・スリープ』に退屈する

もともとホラー映画はSF映画以上に苦手だ。むやみやたらにアクションや音響で迫ってくると引いてしまう。もちろん、スタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』(1980)は例外で、彼の映画は精神的な深みが違う。

その『シャイニング』の続編という『ドクター・スリープ』を満員の劇場で見たが、ただの平凡なホラーにしか見えなかった。私はもともと『シャイニング』の原作を書いたスティーブン・キングの本を一冊も読んだことがない。キングは『シャイニング』には不満だったが、今回の続編の映画化には満足しているらしい。

最初に1980年が写る。少年ダニーが生き残り、2011年になって酒浸りの中年男(ユアン・マクレガー)はある土地にたどり着き、仕事を探す。老人介護の手伝いをしているうちに8年後、彼は自分と同じような予知能力を持った少女アブラに出会う。

児童連続失踪事件が起こり、それが怪しげな魔術集団の仕業とわかる。彼らは人が死ぬと、そこから出てくる精気(単に湯気みたい)大喜びで吸う。イメージは吸血鬼に近い。アブラもその集団から狙われるが、ダニーと組んで戦う。

魔術集団を率いるのはローズ(レベッカ・ファガーソン)で、最後は『シャイニング』の舞台となった雪山のホテルでダニーとアブラと戦う。そのあたりから『シャイニング』への目配せがどんどん出てくる。雪山の道路を走る時の音楽とか、雪の中の迷路とか、エレベーター前に押し寄せる血の海とか、双子の姉妹とか。

それはわかるのだけれど、そもそもの魔術集団がピンと来なかったし、アル中になってしまったダニーもどうかなと思う。ジャック・ニコルソン演じた父親に似た男がバーに出てくるシーンは正直いやだったし、むしろ『シャイニング』をなぞり過ぎだと思った。

この新作を監督したマイク・フラナガンの映画は見たことがないが、『シャイニング』ファンとスティーブン・キング好きの両方を満足させようと作ったように思えた。いずれにしても、私には2時間半は長すぎた。

 

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