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2019年12月30日 (月)

『テッド・バンディ』のマルコヴィッチを楽しむ

ジョー・バリンジャー監督の『テッド・バンディ』を劇場で見た。予告編を見た時に、若い女性を次々に殺した連続殺人鬼なのに女性に人気があったのを見て、興味が湧いた。こういう「詐欺師」は妙に好きだ。

もう1つは裁判長として、ジョン・マルコヴィッチが出ていたこと。彼が落ち着いた涼しい顔で判決を下している様子を見たいと思った。ジョー・バリンジャーという監督は知らないが、実際に起こったテッド・バンディの事件のドキュメンタリーも作っているという。

映画自体はかなり退屈だった。特に前半はテッド(ザック・エフロン)がどのように恋人のリズ(リリー・コリンズ)と知り合うかで、冒頭に刑務所の2人の面会のシーンが出てくるのが、全く結びつかない。途中から彼が殺人の容疑者であることがわかり、コロラドからテキサス、フロリダへと逃亡する。

おもしろくなるのは、フロリダに移ってから。裁判が開かれて、テッドは弁護士を追い出して自信たっぷりに自分の弁護を展開する。そこで出てくるのが判事役のジョン・マルコヴィッチで、ザック・エフロンを完全に食った感じでユーモアと皮肉たっぷりの弁舌を見せる。彼が話し出すだけで嬉しかった。

この映画の特徴は、30人を超す殺人のシーンが一切出てこないこと。そのうえ、リズは彼のことを忘れないし、その前の恋人まで出てきてフロリダの裁判を見守る。そして何人もの若い娘が彼を追いかけて裁判を傍聴するから、ひょっとして本当は別に犯人がいるのかもと思ってしまう。1970年代前半のこととは言え、物的証拠がどこにも残っていないのも信じがたい。

そんなモヤモヤは映画が終わった時にナレーションで事実が語られ、本物の写真が出てくることで解決される。これはちょっと安易な手法では。原題は「Extremely wicked, shockingly evil and vile」=「極めて邪悪、衝撃的に凶悪で卑劣」。これがラストにジョン・マルコヴィッチの口から出る瞬間が一番よかった。

冬休みは授業の準備を兼ねて1日に1本はDVDを見る。今村昌平の『にっぽん昆虫記』やジャン・ルノワールの『素晴らしき放浪者』や『ランジュ氏の犯罪』などなど。レベルの高い古典を見ていると、ちょっとおもしろい新作は全部駄作に見えてしまうのかも。

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