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2019年12月16日 (月)

『パラサイト』の何がおもしろいか

27日公開のポン・ジュノ監督『パラサイト 半地下の家族』を試写で見た。実は見たのは10月でまだ試写が始まったばかりだったが、満員の盛況だった。今年のカンヌでパルムドールを取った話題作で、例えば是枝裕和監督は「「見ろ!」としか言えないし、「面白い!」としか言いようがない」とコメントを寄せている。

確かに後半の展開には目を見張る。絶対に予想ができない方向に走ってゆき、あっと驚く瞬間が最後の最後まで止まらない132分だ。このような映画の批評は難しい。どこまで語っていいのか、わからないからだ。

そのうえ、プレス資料には「ポン・ジュノ監督からのお願い」まであって「本作品をご紹介いただく際、出来る限り兄弟が家庭教師として働き始めるところ以降の展開を語ることは、どうか控えてください」と書かれている。普段はネタバレも平気な私も、こうなると躊躇する。

キム家の4人家族はみんな仕事がなく、宅配ピザの箱を組み立てている。家は半地下で、窓からは路上散布の消毒液が入ってきたり、立ちションをする男たちが見えたり。WIFIも届いたり、届かなかったり。そんな時、大学受験に落ち続けた息子ギウのもとに名門大学に行った同級生がやってくる。

その同級生の紹介で、ギウはIT長者のパク家の娘、ダヘの家庭教師となる。そこでダヘの心をつかんだギウは彼女の弟の美術の家庭教師にと、自分の妹、ギジョンを紹介する。兄妹はこの家に徐々に「パラサイト」してゆき、さらに押し進む。

単に貧乏な一家が金持ちを吸い尽くす話なら、これほど興奮しないだろう。そこにはもっと暗い闇があり、映画が終わってもそれが続くことが暗示される。それはギウ一家の全員が放つ「匂い」であり、強く降り注ぐ雨であり、ある男が語る北朝鮮の核のボタンであるかもしれない。だから大金持ちのパク一家にも影がさしている。

カメラは両方の家を色濃くとらえる。キム家の父親を演じるソン・ガンホを始めとして、どの俳優も影を含んだ明るさを巧みに見せる。全体として喜劇の奥にどす黒さが潜む力強い映像となった。この映画はその闇の力によって、単なるストーリーのうまさを超えた傑作になった。

私は2016年のカンヌで誰もがパルム・ドールだと予想したが取り損ねたドイツ映画『ありがとう、トニ・エルドマン』を思い出した。現代社会を描きながら、明らかにある1点を突破しているから。

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