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2019年12月24日 (火)

『カツベン!』を楽しむ

周防正行監督は、いつも知られざる世界を見せてくれる。学生相撲に社交ダンス、痴漢容疑の裁判、終末医療、そして舞妓の世界。いつも、そうかこうなっているのかと頷いてしまう。

今回の『カツベン!』はサイレント映画の話と聞いて、ちょっと複雑な気持ちになった。私は一応大学で映画の歴史を教えている。サイレント映画についてもよく取り上げる。だからこれまでのような「知られざる世界」ではない。もちろん周防監督は第一作に小津安二郎のパロディでピンク映画を撮ったくらい映画通なので、心配した訳ではないが。

結果は杞憂だった。私が授業でサイレント映画を扱う時は、主に現在DVDで出ている映像を使ってメリエスやアリス・ギイやグリフィスやチャップリンやエイゼンシュテインを解説する。その多くは後からかぶせた音楽付きだ。

この映画は題名通り、活動弁士が中心。正確に言えば、現在も残っている『雄呂血』(二川文太郎監督)が作られた1925(大正14)年、京都に近い田舎町の映画館が舞台となっている。2年後にはアメリカで最初のトーキー『ジャズ・シンガー』が生まれるので、サイレント末期と言えるだろう。

その頃の日本の大きな映画館では弁士のほかにオーケストラが付いていたし、そうでなくても3、4名の和洋折衷の楽団がいた。『カツベン!』はその時代の雰囲気を実に巧みに再現している。主人公の俊太郎(成田凌)が演じるのは、弁士になりたくて盗賊団に入ってしまった若者。その盗賊団は各地で有名弁士の名を騙って映画興行をし、街が空っぽになるのを見計らって空き巣にはいる。

そこを抜け出した俊太郎はつぶれかけた映画館・青木館に雇われる。そこにはかつての人気弁士・山岡秋聲(永瀬正敏)がいるが、酒びたりで役に立たない。人気の若手弁士・茂木(高良健吾)は、隣町の豪華な映画館に雇われる。俊太郎は次第に人気を得てゆくが、隣町の映画館主・橘(小日向文世)はやくざを使ってつぶしにかかる。

驚くのは当時の日本で人気だった映画を次々に見せること。『金色夜叉』や『不如帰』『国定忠治』のような日本映画も『南方のロマンス』や『十戒』のような外国映画も、実は新たに撮影している。映画の中の映画を見ているだけでワクワクするが、そこに映画館主(竹中直人)や映写技師や楽師や警察官が加わっててんやわんやとなる。

あえて言えば、有名は俳優をふんだんに使いながら詰め込み過ぎてあまり生きていない気もした。永瀬正敏も映画館主夫人役の渡辺えりも監督役の池松壮亮ももったいない。これまでの周防作品に比べるとプロットが弱い気がするのは、本人の脚本でないからだろうか。

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