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2020年1月30日 (木)

『レ・ミゼラブル』の衝撃

2月28日公開のフランス映画『レ・ミゼラブル』を試写で見た。この題名だと、数年前のヒュー・ジャックマン主演のビクトル・ユゴー原作のミュージカル映画がフランスでも作られたのかと思うが、全く関係がない。

舞台はパリ郊外のモンフェルメイユで、移民や低所得者層が住む危険な地区として知られる。そこでの警察と住民のいざこざが描かれるが、この題名を使ったのは、モンフェルメイユという街がユゴーの原作に出てくるから。主人公のジャン・ヴァルジャンが出会う女性の娘が育てられた土地として。

「レ・ミゼラブル」は本来の意味は「悲惨な人々」で、確かにこの映画に出てくるのは金がなく未来も見えない悲惨な人々ばかり。冒頭に2018年のワールドカップでフランスが優勝した時の映像が写る。郊外から電車に乗ってシャンゼリゼに集まって、みんなと大騒ぎする黒人の少年。よく見ると、いわゆる白人はそこには半分もいない。

ステファンはフランス北部からその街にやってきた警官。家族の近くに住むために希望して異動になった。彼が犯罪防止班で組むのは手荒な白人のクリスとアラブ系のグワダで、3人で車に乗って街の警備に出る。市長は黒人で必ずしも警察を信頼していない。

大騒ぎが起きているので駆けつけると、ロマのサーカス団がライオンの子供が盗まれたと地元の団地に抗議をしていた。調べるうちにイッサという少年が盗んだことがわかり、逮捕しようとして大きな騒ぎになる。グワダが思わず発砲してイッサに当たるが、クリスは何とか丸く収めようとする。しかしその一部始終はある黒人少年がドローンで撮影していた。

この映画で驚くのは、団地にいくつものグループがあること。市長の一派、イスラム同胞団の面々、警察と裏で組む男たちなど複雑に絡み合っていて、見ていて絶えず不安な気持ちになる。そして最後に少年たちの怒りが爆発し、とんでもない事態が訪れる。

この映画には警察も含めて絶対的に正しい者はいない。完全な悪人もいない。警官たちもかなりやばい仕事を重ねながら何とか日常をこなす。クリスは「俺が法律だ」と言い放つのだから。住民は市長も信用していない。着任したばかりのステファンはその異常な日常を「見る」存在だが、彼自身の立場も安泰ではない。

ここには、移民を受け入れて来たフランスなどの欧米のリアルな問題がそのままに吹き出している。その意味ではまさに現代の映画である。これを見たら『パラサイト』は繊細過ぎてかすんでしまうかもしれない。間違いなく今年前半の最大の話題作である。

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