『ジョジョ・ラビット』がわからない
ニュージーランド出身のタイカ・ワイティティ監督『ジョジョ・ラビット』を見た。実は昨年末に試写で見ていたが、あまりピンと来なかったので、公開後に書くことにした。
この映画は昨年のトロント国際映画祭で観客賞を得ている。最近はこの賞はアカデミー賞の前哨戦と言われており、昨年は『グリーンブック』だしその前は『スリー・ビルボード』や『ラ・ラ・ランド』が受賞している。
だから『ジョジョ・ラビット』への期待は高かったが、私にはよくわからなかった。舞台は第二次世界大戦中のドイツの田舎町、少年ジョジョはヒトラー・ユーゲントを目指しており、空想の中ではヒトラーは毎日彼のそばに現れて、アドバイスをしてくれる。
このヒトラーは監督自身が演じているというが、ちょび髭と髪形以外は全く似ていない。妙に明るくて大声で騒ぐので面食らってしまった。ジョジョたちを鍛える教官(サム・ロックウェルほか)もハイテンションで、大騒ぎでまくしたてる。ジョジョはうさぎを殺せと命令されたがどうしてもできずに、「ジョジョ・ラビット」と命名される。
母のロージー(スカーレット・ヨハンソン)は表向きはヒトラー崇拝者だが、どこかおかしい。ある時、ジョジョは自宅の壁の奥にユダヤ人の娘エルサがいるのを発見する。エルサは母が招き入れたのだが、ジョジョは次第に仲良くなってゆく。
ナチスドイツ時代の「隠れたユダヤ人」はよく聞く話だが、この映画はナチスを崇拝しているが心優しい少年が、ユダヤ人が普通の人間であることを悟っていく過程を見せる。それを極端な教官や警察をコミカルに登場させて笑わせながら、歴史の真実を語る手法である。
つまりは巧みに作られた「ためになる娯楽」だが、私はあまりにも周到なユダヤ人擁護にどこか嫌な感じがした。それ以上にどのコミカルな場面にも笑えなかった。おそらく欧米人にはこれでいいのだろうが、日本人はどこをおもしろがればいいのだろうか。まあ、日本の評論家も絶賛している人がいるので、単に「相性が悪かった」のかも。
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