『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』の味わい
『テリー・ギリアムのドン・キホーテ』を劇場で見た。テリー・ギリアム監督は『未来世紀ブラジル』(1985)を学生時代に見て驚いて以来のファンだが、その後はいつも主演俳優が亡くなったり、怪我をしたりと不幸なニュースが多かった。
『ロスト・イン・ラマンチャ』(2002)は、何とジャン・ロシュフォール主演の「ドン・キホーテ」かと思いきや、途中で彼が腰痛で降板したり、出資者が下りたりという映画製作の失敗を描いたドキュメンタリーのような映画だった。その後も、何人かの俳優の名前が挙がった。ジョン・ハート主演で撮ろうとしたら、彼のガンが発覚して中止になったこともあった。
さて今回こそはようやく本番のドン・キホーテかと思ったが、やはりそうはいかなかった。CM監督のトビー(アダム・ドライバー)はスペインで撮影中だが、スポンサーの意向もあってトラブル続きだ。そんな時ある男から、かつて学生時代に撮った『ドン・キホーテを殺した男』のDVDを渡される。
思わずそのDVDを見て、撮影地が近いことを思い出して行ってみる。ドン・キホーテを演じた靴屋のハビエル(ジョナサン・プライス)は、映画を撮ってから自分がドン・キホーテと思い込み、奇行を繰り返していた。出演したカフェの娘アンヘリカは、スターになれると信じてマドリッドに出て娼婦になっていた。
ハビエルはトビーを従者サンチョ・パンサと勘違いし、冒険の旅に出る。ハビエルはボス(ステラン・スカルスガルド!)が催すロシア人スポンサーのための祭に参加するが、ボスの愛人に迫られて大騒ぎに。さらにスポンサーの愛人として村に帰ってきたアンヘリカに再会する。ハビエルは祭と現実を勘違いして大いに盛り上がる。
時代はあくまで現代で、狂人としてドン・キホーテが描かれるために随所にユーモアが溢れているが、見ていると何だか物悲しくもなってくる。学生時代の夢を思い出すトビーの姿が、監督のテリー・ギリアムを思わせるからだろうか。映画を作る映画の中に、いくつもの映画が仕込まれたような、味わい深い作品だった。
この監督は『ブラザーズ・グリム』(2005)も『Dr.パルナソスの鏡』(09)もどこか不完全燃焼だったが、今回は何か吹っ切れた感じがして気持ちがよかった。
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- 『ウォーフェア』の見せる戦争(2026.02.11)
- 『恋愛裁判』の安定感(2026.02.07)
- またアメリカの実験映画を見る(2026.02.03)
- 「構造映画」を見る(2026.01.28)


コメント