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2020年2月26日 (水)

ようやく『全裸監督』を見た

ようやくネットフリックスの『全裸監督』を見た。もともと3年前に本橋信弘著『全裸監督 村西とおる伝』を読んで感激したのは、ここに書いた通り。ドキュメンタリーができつつあると聞いていたが、最終段階で頓挫したようだ。そうしたら昨年夏にネットフィリックスが劇映画を作ったという。

ここに書いた通り、最近ある原稿を書くために『okja/オクジャ』を見る必要があり、ネットフリックスに加入した。そこで時間ができたら『全裸監督』を見たいと思っていた。なぜなら、エピソードが8話あり、各40分だから320分=5時間以上かかるから、簡単には見られない。

とりあえずと思って1話を見たらおもしろくて2話も見た。そして空いた時間を使って数日のうちに8話を見てしまった。総監督は武正晴で、その下に2人監督がいるのはテレビドラマ式だが、全体を通してある濃厚な雰囲気がある。

まず村西を演じる山田孝之が抜群にいい。カリスマのオーラが少しずつ増してゆく。そして相棒のトシ役の満島真之介がちょっとバカでヤクザでいい感じ。社長役は玉山鉄二が落ち着いた感じで絶妙のトリオ。そして大事なのはメイク役の伊藤沙里で、彼女が撮影現場にいることで、必ず女性の視点が生まれる。さらにそのアシストをする柄本時生や後藤剛範がそれぞれ持ち味を出す。

そして黒木香役の森田望智が、まるで黒木の再来のよう。あくまで自分の欲望に忠実に生きる女を演じている。その母役の小雪が今や年をとって金持ちの元愛人役が似合う。これにアダルトビデオ大手・社長役の石橋凌、ヤクザ役の國村隼、警視庁の刑事でヤクザと通じているリリー・フランキー、ビデオ店長のピエール瀧など芸達者が加わって、渾然とアンサンブルを作っている。

それぞれにきちんと性格付けがなされているので、山田孝之が出て来ない場面も楽しい。もちろんAV監督の話なので女性の裸もセックスシーンも出てくるが、いやらしい感じがない。この種のダークな話にありがちなバイオレンスも少なく、あっても実際には見せない。さすがに世界企業のネットフィリックスだけあって、男中心の映画にはなっていないところが、これまでの映画やテレビと違う。

そして私の世代には、1980年代後半のバブル期の風景が懐かしい。当時の歌舞伎町もディスコもセットでたっぷりお金を使って再現されている。ビニ本やアダルトビデオの流行が時代を語る。「パラパラ」という踊りが何度も出過ぎる気はしたが。

そんなこんなで私は楽しんだが、さてこれが映画としてどうかというと微妙かも。どちらかと言うと、「時間つぶし」にいい感じか。ほかにネトフリで見たいものがあるかというと、ないわけではないが私は仕事として見るべき映画がほかにいくつもある。私にとって配信はやはり「時間つぶし」かも。

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