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2020年3月21日 (土)

『子供たちをよろしく』を見る

前川喜平氏は私にとって妙に気になる存在だ。元文科省の官僚トップにいたのに、辞めてからは正面から安倍首相批判をしている。安倍政権を揶揄した映画『新聞記者』にも本人として出ていた。そこで彼が「企画」としてクレジットされている隅田靖監督の『子供たちをよろしく』を劇場で見た。

「企画」にはもう1人、同じく元文部官僚の寺脇研氏も挙がっている。彼は「総括プロデューサー」でもある。原作のないオリジナル作品で、隅田監督は脚本も書いているから、「企画」2人の考えも大いに反映していると考えるべきだろう。

その割には、全く押しつけがましいな匂いはなかった。もちろん内容はバリバリの社会派だったが、地方都市の中学生のいじめ問題とその背景を丁寧に描いている。中学生の洋一は4人の同級生から「臭い」「ゴミオ」といじめを受けている。彼の父親(川瀬陽太)はデリヘルの運転手で、母はいない。

いじめをする同級生の1人、稔は、姉がデリヘルで働いていることに気づく。主婦の母(有森也実)は姉を連れて父(村上淳)と再婚していたが、実はアル中で昼間から日本酒を飲み、父を怖がっていた。自分の姉が洋一の父の運転する車でデリヘルをしていることを知った稔は動き出す。

洋一と稔の静かな表情がいい。怒りや悩みを心の奥に持ちながら、大人を社会を見る。惜しむらくは大人たちの造形がワンパターンで弱いこと。川瀬陽太演じる父はパチンコ中毒で、バーの若い女に夢中。デリヘルの会社に借金をしてはその日暮らしをしている。実際にはいるだろうけど、見ていてつらい。

村上淳演じるもう1人の父親は、妻に暴力をふるい、義理の娘に手を出そうとする。何を考えているのか、全く内面が見えない。最後に義理の娘と出ていくのもわからない。有森也実の母は、ただ耐えて泣いて酒を飲むだけで、なぜ再婚したのかわからない。

もちろん中心は子供たちなので、彼らに比べてダメな大人たちを描こうとしたのはわかるのだが。そのうえ、母が泣くシーンなど、直接的な感情表現が多すぎ、音楽もあいまってベタな印象が残る。せっかく芸達者たちを脇役に揃えたのに。

言葉では明示されないが、映画内の土地表記や駅名を見ると群馬県桐生市のようだ。それなりに都会だし、バーやデリヘルもある。実はあちこちに問題をはらむこうした「小さな都会」が全国に無数にあるのだと思う。

劇場は、コロナ騒ぎの平日昼間にしては人が入っている印象を持った。2人の「企画」者の知名度もあるだろうが、こうしたストレートな社会派映画は確実に求められていると思う。

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