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2020年3月14日 (土)

『デッド・ドント・ダイ』を楽しむ

4月3日公開のジム・ジャームッシュ監督『デッド・ドント・ダイ』を試写で見た。ジャームッシュが作るゾンビ映画ということで期待したが、彼らしいとぼけたおかしみが随所に溢れる映画で大いに楽しんだ。

まず、冒頭に2人の警官がゆるい感じ出てくる。署長のクリフ(ビル・マーレイ)は経験豊かだが余裕あり過ぎだし、巡査のロニー(アダム・ドライバー)は直情型で行動が早いが融通が利かない。2人はなぜか森で暮らす世捨て人のボブ(トム・ウェイツ!)を、ニワトリを盗んだ疑いで探すが逃げられる。

もう1人の女性警官ミンディ(クロエ・セヴィニー)を加えても、警官は街に3人しかいない。センターヴィルという名の田舎町で、街に一つしかないダイナーの女主人と女性店員が惨殺される事件が起こる。彼らは内臓を食いちぎられていたが、なぜかコーヒーが飛び散っていた。

この「コーヒーゾンビ」の2人組(イギー・ポップとサラ・ドライバー!)に始まってあちこちでゾンビが出る。酒好きの女はワインのシャルドネを求めるゾンビであり、ギターを探すゾンビ、WIFIを探すゾンビ、ファッション好きのゾンビ、ニンテンドーを探すゾンビなど、生前の物欲を求めるゾンビたちで街は溢れる。

ホラー映画に詳しく、『吸血鬼ノスフェラトゥ』のTシャツを着て映画『サイコ』やジョージ・A・ロメロの名前を口にする若い雑貨屋は、金物屋の青年と共にゾンビに殺されないために立てこもりを始める。

3人の警官は街でゾンビたちを次々に殺そうとする。ロニーは「頭を殺れ」Kill the Headと叫び、斧で頭を落とす。クリフは銃で頭を撃つ。頭がとんでも血は全く流れず、煙のようなものが出るだけ。ミンディは死んだ祖母のゾンビに引っ張られてしまう。

途中でロニーはクリフに「俺はジムからもらった脚本を全部読んだから、どうなるか知っている」と言うが、クリフは「俺は自分のパートしかもらわなかった」と言うくだりなど本当におかしい。

一方、不思議な葬儀屋の女主人ゼルダ(ティルダ・スウィントン!)は、なぜか白塗りで日本刀を振り回す。3人の警官に署の留守番を頼まれるが、攻めてくるゾンビたちの首を優雅に日本刀で断ち切る。2人の警官は押し寄せるゾンビにとうとう逃げ切れなくなるが、ゼンダはあっと驚く方法で去ってゆく。

ゾンビ映画へのオマージュのようなストレートなものではなく、ジャームッシュの常連たちが楽しみながら自然にメタ映画を演じているようで、見ていてにやにやと笑いたくなる。この不思議な余裕の気分は、ジャームッシュ映画ならでは。

日本の配給のロングライドの名前が製作としても冒頭に出てきた。こういう映画なら世界中で上映されるので、億単位のお金を出しても回収できるのではないか。

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