ほぼ無人のアーティゾン美術館を楽しむ
都知事の週末の「外出自粛」に逆らって、京橋の「アーティゾン美術館」に行った。京橋のブリジストン本社にあった「ブリジストン美術館」が1月に全面改装して2倍の2100平米の展示室になり、館名も変わった。31日(今日!)までの3フロアーのコレクション展を見たいと思った。
国や都の美術館がすべて休館しているなかで、この美術館も2月末にいったん休館にしたが、3月半ばから開館した。ここは日時指定チケットを売っているので、並ぶ必要はないし、混み過ぎる心配もない。こういうコロナ騒ぎの時期にはこのシステムはピッタリだが、週末の夕方はほとんど無人だった。
やはり新しい美術館はいい。サントリー美術館も三菱1号館美術館も、できた時はその快適さがずいぶん嬉しかった。考えてみたらこれらも私立の美術館で都心にある。天井は高く、建築デザインは心地よく、照明は大胆に濃淡をつけて作品を浮き上がらせる。アーティゾン美術館はこの2つをさらに上回る心地よさがあった。
まずこの2つより広い。4階から6階まで、700平米が3つあるから、常に自慢のコレクションを見せながら、同時に企画展もできる。都内でここより広いのは、東京国立近代美術館や国立新美術館などの国立か、東京都現代美術館や江戸東京博物館などの都立くらい。都でも東京都写真美術館はここより狭いか。
今回は約2800点の所蔵品から、206点を精選して3フロアーで展開している。まず6階は「アートをひろげる」として、代表作を印象派から現代まで見せる。次に5階と4階では、「アートをさぐる」として「装飾」「古典」「原始」「異界」「聖俗」「記録」「幸福」のテーマに分けて時代を横断して並べる。
一番おもしろかったのは「聖俗」で、エジプトのミイラの彩色木棺や猫のブロンズのそばに、ザツキンやジャコメッティの彫刻があったこと。江戸時代の洛中洛外図屏風もその1点で、真っ暗な部屋に驚異的な照明で見せている。あるいは「装飾」ではイランの紀元前1世紀の壺の横に景徳鎮の瓶やエミール・ガレのトンボ模様の壺があった。まさに時代を超えた美の普遍性を楽しめる。
そして各展示室に1、2人しか観客がいない贅沢。これはたぶん東京で一番ウィルスなどから安全な「外出」かもしれない。「ロックアウト」などに踊らされた人々でやたらに混むスーパーに行くよりいい。今日まで。
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