グザヴィエ・ドランの成熟
グザヴィエ・ドランの新作『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』を劇場で見た。1989年生まれのこの監督は、『私はロランス』(2012)に衝撃を受けて以来、すべて(といっても新作を含み7本)見ている。しかし最近の『たかが世界の終わり』(16)にはちょっとうんざりしていた。
今回は初の英語の映画であり、脇役に大物俳優がずらりと並んでいる。どうなるかと思ったが、ドランらしい繊細さや感傷性を残しながらも、あまり独りよがりにならず、共感を得やすい展開になっている気がした。
物語は、2006年、ニューヨークで11歳の少年ルパートがテレビでジョン・F・ドノヴァン(キット・ハリントン)の29歳の死を知る場面から始まる。ルパートは文通をしていたジョンからの手紙を母が隠しているのではないかと疑う。それから2017年のプラハに飛ぶ。女性ジャーナリスト(タンディ・ニュートン)が空港で大人になったルパート(ベン・シュネッツァー)に気乗りのしないインタビューを始める。再び映画は2006年に戻る。
2006年の部分も、さらに数年前に遡ってルパートがジョンに手紙を書くきっかけや、彼の学校生活、母(ナタリー・ポートマン)との確執が語られる。他方、ジョンも次第に有名になっていくなかでの恋人(男性)や母(スーザン・サランドン)やマネージャー(キャシー・ベイツ)との難しい関係が語られる。そして時おり、2017年のインタビューに戻る。
場面はあちこちに飛んで目まぐるしいが、巧みな構成でするするとついて行ける。それ以上に、ルパートやジョンの心の動きがこの監督のこれまでの映画のような自分勝手でヒステリックなところがなく、素直に共感できる。そして何か所かで泣かせる場面が出てくる。流れに関係なく突然出てくる老人(マイケル・ガンボン)がジョンに語りかけるシーンもいい。
見ていて2人の主人公が愛おしくなるし、ナタリー・ポートマンやスーザン・サランドンを始めとして脇役で出てくる著名な俳優たちもきちんと人間造形がなされていて見ていて気持ちいい。
この映画はドラン監督がディカプリオに手紙を書いた実話から始まったというが、そんなパーソナルな話でもこれだけわかりやすくかつ深い感情のこもった映像に仕立て上げる手腕はさすがのもので、成熟を感じた。今年30歳のこの監督は、まだまだこれからだ。
さすがに映画館の客は少ない。土日の電車も空いている。一方で自宅近くの神楽坂には天気がよかったせいもあって、大勢の人々が出歩いていた。とりあえず近場で過ごす、ということか。
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