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2020年3月12日 (木)

『在りし日の歌』に泣く

4月3日公開のワン・シャオシュアイ監督の中国映画『在りし日の歌』を見て泣いた。正確に言えば、泣くかなと予想していたが、やはり涙が出た。チラシによれば「中国が大きく揺れ動いた1980年代から2010年代。激動の時代を生きた夫婦の、かけがえのない歳月」。

その言葉を見て、フォン・シャオガン監督の『芳華-Youth-』(2017)のようなものかと思った。つまり、かつての中国を懐かしみながら、現代までのあまりに急激な変貌を見せるものかと。

『在りし日の歌』も中国のこの数十年の変化を見せる映画だったが、少し違った。一つは『芳華』は70年代が思い出の核にあるが、こちらは80年代であること。それゆえか、政治を描きながらもより個人的な物語が語られる。

1980年代から90年代は鄧小平の時代。つまり、「改革開放」と「一人っ子政策」。ヤオジュンとリーユン夫妻は地方の国営工場で働き、友人夫妻と同じ日に生まれた子供を育てていた。2人目もできていたが、「一人っ子政策」の圧力で生むことはかなわなかった。そのうえ、リーユンは改革のリストラで仕事を失う。

90年代に大切な一人息子を失い、彼らは街を去って、福建省の港町で整備工場を始める。そこで養子を迎えるが、その子は電子ゲームに夢中で意思の疎通は難しい。そして2011年、彼らは連絡を受けてかつての故郷に赴く。

中心にあるのは夫婦愛であり、子供への思いであり、友情である。背景には30年の社会の激動があるが、映画はあくまで個人的な感情の綾を繊細に紡ぎ出す。80年代、90年代、2000年代、2010年代と目まぐるしく場面は行き来するが、少しずつ老いてゆくこの夫婦の変化(メイク)が巧みで、すぐに時代がわかる。

ときおり中国語の「蛍の光」が流れる。中国では「友情はとこしえに」という題で、長く続く友情を歌うようだ。最後は3組の夫婦の友情の物語で終わるこの映画にふさわしい。

私も80年代から現在まで、大学生から定年間際まで40年を生きているが、もちろん日本ではこれほどの変化がなかった。何となくラクな人生を送ってきた。だからこの映画を見ると、妙に羨やましい気分にさえなる。

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