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2020年3月17日 (火)

『君は愛にふさわしい』の爽やかさ

アンスティチュ・フランセ東京でアフシア・エルジ監督の『君は愛にふさわしい』を見た。去年のカンヌの批評家週間で上映された作品だが、一昨日ここに書いたレクチャーを聞くついでに見た。これが第一回監督作品とは思えないほどの佳作だった。

監督のアフシア・エルジは今年33歳だが、アブデラティフ・ケシシュ監督の『クスクス粒の秘密』(2007)でデビューしたアラブ系の女優。その後もケシシュ監督やほかの監督の映画に出て女優としてのキャリアを積みながら、今回が初監督となった。

この映画では自らが主役のリラを演じている。冒頭は、リラが恋人レミを追いかけてある女のアパートの前で待つシーン。レミが通りに出てくるとアパートから女が顔を出す。レミは元カノのミリアムの元に戻っていた。

リラがレミが忘れられないが、レミはボリヴィアに1人で3週間旅行に出かける。リラは友人たちに忘れるようアドバイスを受けて、新しい男性に近づくが乗り気になれない。公園で声をかけられたアジア系の料理のうまい男と寝たり、出会い系サイトで知り合った男に会ったり、パーティで会った男に迫られたり、行きつけのカフェでバイトをする若者に声をかけられて写真を撮らせたり。

一方レミは毎日電話をかけてくるが、実はミリアムにもかけていたことを知る。レミが帰国してもリラはもはや乗り気になれない。そんななかで出会った男の一人とだんだん親しくなってゆく。

パリで不動産屋に勤める30歳前後のアラブ系の女性の日常のひだを克明に描く。魅力的なので寄ってくる男は多いが、なかなか信用がおけない。1年間一緒に住んだ男はひどい奴だとわかってもなかなか忘れられない。そんななかで、何とか元気を出して生き続ける女性の気持ちがひしひしと伝わってくる。ケシュッシュ監督に似た感覚的な映像が生きている。

リラと仲のいいゲイの男や友人たち、年上の夫婦、行きつけのカフェのおやじなど主としてアラブ系やアフリカ系の人々の優しさもしっかり描かれていて、次第に爽やかな気持ちになった。最後に出会った写真家志望の年下の男とうまくいくようにと祈りたくなる。

さて映画の最初に東北新社のロゴが出てきたが、これは公開予定だろうか。なかなか難しいだろうが、ビデオや配信だけでなくぜひ公開して欲しい。

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