コロナ騒ぎで何が変わったか:その(9)映画館と保健所
とうとう「緊急事態宣言」が出た。昨日の夕刊や今朝の朝刊にこの文字が真っ黒に白抜きで大きく踊っているのを見ると、やはりドキッとする。これは「天皇崩御」などより強くて、「東北で大地震」とかむしろ「米国に対して宣戦布告」というレベルにも見える。ところが身近な風景は何も変わっていない。
それでもこの「要請」にはどこも従う。百貨店は地下の食料品売り場を除いて閉じる。映画館もたぶん都内のすべてが早々と今日から休館になってしまった。実は私は昨日も一昨日も映画館に出かけていた。
アート系の映画館は席数を半分にして続けていた。それなりに入っている。昨日ここで書いた『巨人傳』を上映していた神保町シアターは、定員の半分の48席がほぼ埋まっていた。客層は、この2週間ほど映画館に少なくなった中高年の映画ファンで、男性1人が多い。1人暮らしで誰にも迷惑をかけない、と思っているのかもしれない。
私も既にそうだが、人生は十分に楽しんだので、これから先はいつ死んでもいい、と思う人は多いのかもしれない。居酒屋も閉じるところが出てきたが、本当においしい店は今でも客が一杯だ。中高年が大声を挙げて飲んでいた。
映画館に話を戻すと、ある映画館主はもしこのまま上映を続けたら、2、3日のうちに保健所が来る、と言った。なぜかというと「善意の人」が「あの映画館は開けていますよ」と保健所に電話をするからという。
似た話は前に経験したことがあった。有楽町の朝日ホールでイタリア映画祭を始めた2001年とか02年頃、満員で立ち見客を何十人も入れたことがあった。客の1人が警察に電話をして、そこから保健所に話が行って、保健所はホールを厳重注意した。当然私はホールの支配人からこっぴどく叱られた。
なぜ保健所かと言うと、映画館の業界団体である興行組合は厚生労働省(旧厚生省の部分)の管轄で、末端は保健所だから。興行組合を束ねる全興連は「全国興行生活衛生同業組合連合会」で「衛生」の文字がある。基本となる法律は興行場法で昭和23年に遡る。つまり戦後の混乱でできたストリップ小屋などの不潔な場所の公衆衛生を守らせるところから来ているのだろう。
いずれにしても保健所がやってきたら、「おたくも休館にした方がいい」と言うだろう。そして再開の時の認可で意地悪をされるかもしれない、とのことだった。部外者にはよくわからないが、保健所が映画館を取り締まるというのは何だかヘンだと思う。
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