コロナ禍で何が変わったか:その(17)大学は学費を減免すべきか
最近、ネット上では学費の減免を求める署名運動が盛んになっている。「ミニシアターを救え!」プロジェクトもやっていたChange.orgを見ると、20以上の大学で学生が中心になって学費を安くしろと各学長宛に訴えている。それを取りまとめて首相宛に出す仕組みもできつつある。
大学を封鎖しているから、施設使用料や実習・実験費の分を返せというのが基本的な論理である。さらにコロナ禍で学生バイトが激減しているという事情も書かれている。慶応、中央、法政などの有名大学でも起こっていて、大学によっては1000名以上の署名が集まっている。
私も大学から給与をもらっているので、はたしてこの要求は正しいのかどうか考えた。とりあえず当面はほとんどの大学の授業がオンラインに変わった。学生は教員と会うこともできないし、図書館も使えない。友人にも大学では会えないし、サークルもできない。どう考えても例年に比べて損をしている。
ただ、教員の側ではオンライン授業で通常よりも準備に時間をかけているのは事実。新しいソフトを導入して、講習会まで開いて準備している。スマホも使えない定年間際の同僚は、死ぬ気でGoogleのClassroomを学んでいる。WEBカメラ付きでないPCを使う教員は、自費で新たにPCを買ったり、WEBカメラを買ったり(マスクと同じく売り切れで高騰中)。要は教員も、時間やエネルギーやお金を投じている。
もちろんスマホしかない学生がPCを買う例も多いし、自宅にWIFIを導入した学生もいると思う。要はコロナ禍では教員も学生も大変な目にあっている。さてそこで大学は学費を返すべきか。今週の「アエラ」で佐藤優氏がコラムでこのことに触れていた。
「筆者は学費の減免は筋が違う話と思っています。なぜなら、このような困難な状況の中でも大学は教育と研究を続けているからです。大学が授業料減免に踏み切った結果、経営が困難になると、教育、研究の質が低下します。経営基盤の弱い私立大学の場合は、倒産する可能性もあります。そのような状況になって、被害を被るのは学生です。
この際に大学が不要不急の経費を節減するのは当然のことです。その上で、学生と保護者の経済状況を考慮して、学費納入が困難な人に対しては、年度を超えての延納を認める、貸与型の奨学金を大幅に拡大するなどの措置で、危機的状況を乗り切るしかないと思っています」
確かに大学の6割が定員割れの現状では、要求にあるように学費を半額にしたら潰れる大学が出るだろう。今のところは5万円や3万円のオンライン授業補助費を出す大学が10以上出てきているが、それとても財政的に余裕のある大学の話。私の大学も3万円を出すが、それだけでも学科の予算を相当に減らす必要が出てきた。
オンライン授業が軌道に乗り始める6月頃には、学生の不満も少しは収まるのではないか、というのが私の希望的観測である。明らかにオンラインになってよくなった面もあるし、何より教員のがんばりが伝わるはずだから。少なくとも顔のわかる2年生以上は問題ないような気がするが、どうだろうか。
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