オンライン授業でわかったこと:その(3)
私は今日は授業がないので、とりあえず月曜から始めたオンライン授業の1週間は終わった。ようやく、技術的には「声が出ません」とか「何も写っていません」はほぼなくなった。この数日で一番感じたのは、「パフォーマンスでごまかせない」ということ。
これまでの対面する授業なら、時々ウケを狙った冗談を挟むと教室が沸く。クスッという笑いがさざ波のように広がり、全体が打ち解ける。眠そうにしていた学生もその雰囲気を感じて、しばらくこの人の話を聞いてみようという気になる。ところがオンライン授業では反応が全く見えない。
大人数の授業だと学生はカメラもマイクもオフにしている。教師は学生の顔も見えないし声も聞こえない。学生同士でも同じ。学生にはパワポの画面が見えて、私の声だけがラジオのように聞こえる。私はまるで誰もいない部屋でたった一人で紙芝居をやっているみたいで、とても冗談は言えない。
最初は少人数のゼミでも、学生、とくに女子は頼んでも顔を見せてくれなかった。そこで前日に、「各自の意見を求めるので、話す時は顔出しをしてください」と伝えた。すると学生によってはお洒落をしたりメイクをして現れた。これは前日に言っておかないとダメだ。男子もそれなりにカッコつけて現れる者もいる。
私は今週はすべての授業を大学の研究室から配信した。もし操作がわからなくなったり、パソコンがフリーズしたら、近くにいる助手の一人に助けを求めようと思ったから。実際に1日目は、助手が「何も写ってませんよ」と研究室に飛び込んできた。
来週からはたぶん自宅からでもできると思う。しかし当面は大学に行って研究室から話すつもり。幸いにして私の大学は「封鎖」されていない。一番の理由は場所を変えると緊張感が出るからだが、もう一つは前に書いたように資料をスキャンしてアップするため。
これまでは自分が説明していたものを、できるだけ文章を配布して各自で読んでもらう。「後で解説しますから、今から5分間で読んでみてください」「今からこのリンクで映像を見てください」という具合。そもそもパソコンを前にした授業は、教師も学生もリアル授業より精神的に疲れる。だから時々話すのをやめて、自習時間を設けた方が良さそう。
冗談を言わない分、授業は早く終わる。その分、ミニ課題を出す。そしてそれを書いて出したら出席にする。少人数のゼミなどは、大量に資料をスキャンしてアップし、家で読んでもらう。あるいは自宅でネットや配信で映画を見てもらう。
そのシステムを考えるのはひどく大変だが、学生が「自ら学ぶ」という本来の形に意外に近づいている部分はあると思う。まあ、まだ1週間だからよくわからないけど。
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