配信で『クスクス粒の秘密』を見る
今日から映画館が開くが、この2カ月近く、一度も配信で映画を見ていないから不思議なものだ。授業の準備のために膨大な数のユーチューブを見たのに。もちろんそれは楽しむためでなく、画質やスクリーンサイズやバージョンや字幕の有無を確認して授業で学生に見るよう指示できるかを調べるのが目的だった。
2月にある文章を書くためにネットフリックスに加入したが、その後は全く見る時間がなくて解約した。ただしユーチューブをたくさん見たせいで、パソコンで映画を見るのに抵抗がなくなった。
映画館のない最後の夜に一度くらい配信で見ようと選んだのが、アップリンクが始めた「HELP THE映画配給会社 配給会社別見放題配信パック」。これは発想がおもしろいと思ったし、何本も見て2千円前後とは安い。そこでいろいろ眺めたが「オンリー・ハーツ」という会社を選んだ。
ここにある配給会社の多くは社長さんと友人だ。「オンリー・ハーツ」の奥田さんも存じ上げているが、選んだのはアブデラティフ・ケシシュの劇場未公開の『クスクス粒の秘密』(2007)を見たかったから。この監督は『アデル、ブルーは熱い色』(2013)が大好きだった。
そのうえなんと30本が1490円で3か月見放題。1本でも惜しくはないので、さっそくカード番号を入れて見始めた。画面はVimeoだった。映画は南仏のアラブ系の移民社会を描く。
61歳のスリマーヌが主人公で、彼は勤める造船所の上司から仕事を減らされて喧嘩をしてしまう。友人に魚をもらって向かうのは別れた妻の家だが、罵られる。次に喧嘩ばかりの娘夫婦の家で孫娘を見た後に小さなカフェ兼ホテルに向かう。彼はそこの女主人ラティファとできていて、ホテルの一室に住んでいた。
ある日曜の昼、スリマーヌの妻が作る魚(ボラ)のクスクスに子供たちが集まる。若い息子を除くとみんな結婚しているが、どこの家庭も問題だらけ。それでもみんなおいしそうに母のクスクスを食べる。参加できないスリマーヌには息子がクスクスを持ってきてホテルで1人で食べるが、チュニジアの故郷に帰るよう勧められて沈黙する。
そこまではよかった。手持ちのカメラで移民社会がドキュメンタリーのように撮られていて、家族のそれぞれの生き方にきちんと光が当てられている。それからスリマーヌは船でクスクスのレストランを開業すべく、ラティファの娘、リムと動き出す。銀行や役所や保健所を巡るが、その要領の悪さといったら。
極めつけは開業のためのお披露目パーティで、目玉のクスクスそのものが届かないこと。それは息子のバカな行動が原因だったが、スリマーヌは必死で事態を解決しようとする。元イベント屋の私は、まるで自分がその現場にいるようで頭に血が登ってしまった。
映画は素晴らしかったが、2時間半の映画を見終わっても私は興奮冷めやらず、珍しくなかなか寝付けなかった。この映画についてはもう一度きちんと書きたい。
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