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2020年5月13日 (水)

追憶のアメリカ館:その(5)

今思うと、1984年夏から1年間のパリの国際学生都市・アメリカ館では、いい出会いがいくつもあった。まず、映画研究の先輩としてその時から今に至るまでお世話になっている早大の武田潔さんが、偶然に私の2階の部屋の真上に住んでおられた。誰かに紹介してもらったと思うが、最初のきっかけが記憶にない。

当時彼は、映画記号学の泰斗、クリスチャン・メッツ氏のもとで博士論文を仕上げていた。毎日のように図書館に出かけていたが、一方で映画を見ることも怠らなかった。彼は私に「まず早くから発表されているシネマテーク・フランセーズのプログラムをチェックしておき、空いた時間に新作や旧作を映画館で見る」ことを勧めてくれた。

「なぜならシネマテークでやる作品は今後見る機会がないことが多いから」。もちろんビデオもDVDもない時代だった。彼はルールとして映画を見る時は絶対にメモを取らず、終わってから席に残って何やら書いていることもあった。私も真似をしたが、そもそも古い映画を見ている量が違う。

その秋にシネマテークでフリッツ・ラングの全作品上映があったが、いきなりサイレントのドイツ映画をフランス語や英語の字幕で見ても、その有難みはわからなかった。見ているうちによく寝た。この特集に合わせてロッテ・アイスナーが書いた分厚いラング論が仏語で出たので買ったが、これまた読むと眠くなった。

『ペール・ライダー』の公開に合わせて、クリント・イーストウッドの大特集もあった。初日にイーストウッドの舞台挨拶があったが、「昔、パリに来た時は全く相手にされなかったが、今日は満員のお客さんの前で話せて嬉しい」というようなことも言ったはず。夜は7時からと10時からの上映だった気がする。10時の回で『アウトロー』のように2時間過ぎる映画だと、地下鉄ギリギリだった。

ヴィム・ヴェンダースの『パリ、テキサス』の封切りの前に、彼が選ぶ映画20本という特集もあった。ゴダールの『はなればなれに』やニコラス・レイの『夜の2人』はいかにもだが、カルネの『霧の波止場』があったのが意外だと思った記憶がある。

ヴェンダースは、大書店「フナック」で『パリ、テキサス』写真集出版記念の講演会があった。本は買わずに、会場に貼ってあったポスターを盗んできて、今もたぶん手元にある。

武田潔さんと同じくらい影響を受けたのが仏文学者で評論家の中条省平さんだが、今日はここまで。

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