カラスをじっくり見る
昔、フランス人の美術館長が「日本にはカラスが多くて気味が悪い」と言ったのを覚えている。その時彼は我々日本人と揉めていたので、何かと不快感を表明したかったのではないかと受け取った。しかしやはりフランスでは、カラスは不吉な意味を持つようだ。
フランスのアンリ=ジュルジュ・クルーゾー監督がナチス支配下で撮った『密告』という映画があった。この原題がLes corbeaux=「カラスたち」で、ある村の住民たちに送られる怪文書にはいつも「カラスたち」という署名があったというもの。この映画は誰がカラスか最後の最後にならないとわからないし、汚職とか不倫とかがどんどん出てくるので目が離せない。
仏和辞典を見ると、corbeau=カラスには「司祭」「雇い会葬人」「墓泥棒」「不幸をもたらす男」などの意味もあるようだ。日本でもカラスのイメージはそんなにはよくないが、私は小さい頃、2、3分で風呂から出るので「カラスの行水」と言われていたから、どこか親しみがあった。
コロナ禍で家に籠ると、散歩の機会が増えた。すると自宅の近くにたくさんカラスがいることに気がついた。朝から「カアカア」と鳴いている。ある時、2羽のカラスが並んでいるのを見つけた。よく見ると、この2羽は電柱や電線や桜の木を使って「追っ駆けっこ」をしているように見えた。
少し大きい方が先に飛んで別の電線に移る。そして「カアカア」と鳴く。すると小さい方が追いかけて隣に並び、「カアカア」と鳴く。これが2、3分ごとに場所を変えて、えんえんと続く。最初は大きい方が逃げて、小さい方が寂しくて追いかけているのかと思った。
ところがよく見ていると、大きい方は別の場所に移ってから小さい方をチラリと見て「カアカア」と鳴くことに気がついた。つまりは遊びというか、求愛行為なのかと思った。それにしてはいつも50㎝くらい距離がある。そしてこの2羽はえんえんと続ける。
気になったので翌朝また同じ場所に行ってみた。ところがそこには昨日とはたぶん別の1匹がいるだけだった。こちらは攻撃的で、私がいるにもかかわらず地面に降りてきて、食べるものを探している。それから別の方向に飛んで行ったが、そこはゴミ置き場の近くだった。その日は生ゴミの回収日で、清掃の方が大きなビニール袋に生ごみをまとめていた。
そこにカラスは向かった。清掃員は箒で追い返す。しばらくするとまた寄ってくる。「カアカア」と鳴くと、そこには3、4匹集まってきた。やはりこれは少し怖い。これが死体に群がると考えたら、やはり「不吉」そのものだ。
生まれて初めてカラスのことを考えたのも、コロナ禍のおかげだろう。ぼんやり見ていると、いつか私に向かって襲ってくるかもしれない。
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コメント
カラスというと、親父のことを思い出します。親父が小さいころ、そのおふくろさんに「このかうかうカラスが!買う~、買う~、ばあゆうて。」とよくいわれたそうです。「かうかうカラス」って、なんかいいですよね。
投稿: jun | 2020年5月20日 (水) 20時05分