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2020年5月 8日 (金)

「オンライン授業」でわかったこと:その(1)

実は「オンライン授業」は、私が教える大学ではまだ始まっていない。本来ならば4月6日からだったのが、2回延期になって来週11日(月)からになった。もちろん「対面授業」(なんという表現!)はできない。

この1か月は、まるまる「オンライン授業」の準備に使った。まずはZoomやGoogleのClassroomとMeetの使い方を覚えた。もともと私はパワポを使っている。それをめくりながら紙芝居みたいに話す。それはそのままZoomやMeetの画面共有でやれるとわかった。問題は通信容量の爆発的増大だが、今日はそれには触れない。

私は映画を教えているので、よく授業でDVDを流す。短いものは全編見せるが、多くはDVDのチャプターや分数をメモしておいて、そこだけ数分流す。「これが世界で最初のクロース・アップですよ」という感じ。ところがDVDをパソコンで動かして画面共有しても、写らないことがわかった。

コピーガードのない自家製DVDでもダメ。そこで対策を考えた。1.テレビモニターに写してそれをスマホで見せる。2.動画をダウンロードして、事前に学生に配り、各自で見てもらう。3.ユーチューブにあるものはリンクを張って、「さて今からこれを見てください」とメッセージを送るか、「授業後に見てください」とする。4.「Amazon Primeにあるので後で見てください」などと有料の配信サービスを紹介する。

1.と2.は著作権法上、違法となる。もともと大学の普通の授業でDVDを流すことは認められているが、配信となると話は別。一部であろうが勝手に配信してはならない。それからDVDやユーチューブから動画をダウンロードするのはそもそも違法で、それを配信などもってのほか。結局3.か4.しかない。

さてユーチューブで映画を探し始めて、私は驚嘆した。何でもあるし、時には恐ろしく高画質。例えば溝口健二が1936年に撮った傑作『浪華悲歌(エレジー)』と『祇園の姉妹(きょうだい)』はアメリカのクライテリオン社のEclipse Seriesからの動画である。最初にEclipseのロゴまで出てくる。

クライテリオン社は一時期日本の紀伊國屋書店が目指したが、要は映画史上の古典を復元版などで出す志の高いメーカーだ。そこのEclipseというシリーズは、かなりマイナーなものをボーナス動画などなしでBOXで売る。日本映画でも成瀬巳喜男のサイレントなど日本で出ていないものも入手できる。

それがユーチューブで見られるとは。松竹が出したDVDからアップすれば、松竹はユーチューブに抗議してすぐに見られなくなる。たぶんアメリカではそれが合法的なので、あえてEclipseのロゴを入れたのではなないか。清水宏の『有りがとうさん』や『按摩と女』なども同じ。

10代後半から映画を見続け、40年近くスクリーンにこだわってきた。そうでなければDVDやブルーレイをそれなりの金額で買った。だから無料のユーチューブはこれまでほとんど見なかった。私の中の常識の1つが、音を立てて崩れていった。

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