真夜中に電子音が
先日、真夜中に「カチ、カチ」と音がした。どうも私の部屋から聞こえてくる。最初私は虫かなにかが動いているのかと思ってまた寝た。すると「カチ、カチ、カチ」とまた聞こえた。どうも虫ではなさそうだ。起き上がって部屋に行く。
部屋に入ると音は止んでいた。しばらくすると「カチ」。その方向を見るがどこから出ているのかわからない。数秒置いて「カチ、カチ」と鳴り、また止む。これは腕時計が急に動き出したかと探す。
部屋の中には使わなくなった安い時計が10個以上ある。大学生の時に2000円くらいで買ったものから、この15年ほどスウォッチの特売で買ったものまで。そのほとんどは壊れている。スウォッチは何年も使われないようにベルト部分が2年ほどで壊れる仕組みになっているので、使えないスウォッチが山積みになっている。また「カチ」。
もちろんそれらはすべて電池切れだから音を立てるはずがないが、一応全部見た。次に探したのが、過去の携帯。90年代後半に初めて買ったAUのものや、旧ヴォーダフォンの初めて海外でもそのまま使えたモデルなどが出てくる。どれももちろん真っ黒で反応しない。あるいは海外に行った時に買った数百円の現地の携帯も数個。「カチ、カチ」。
まさかと思って、現在使っているアイフォンも見るが、異常はない。時間は朝の3時半だった。たぶん30分は過去の時計や携帯を眺めていた気がする。ああ、この時計はフランスのトゥルーズで買ったな、などと思い出しながら。
また数分おいて「カチ、カチ、カチ」。ふと、これは夢かもしれないと思った。その日は授業が午前中からと午後からあるので、それが重荷でこんなことを自分で考えついたのか、あるいは学生たちの「やめてくれ」という怨嗟の声の集積か。
もう一度「カチ」という音を聞いた時に、部屋全体を見た。電子音は、どうも天井の方と呼応している感じがある。「カチ」。上を見たら、エアコンがきらりと光った。そうかとエアコンのリモコンを見ると、どうも作動している。慌てて単4の電池2個を抜くと、音は消えた。
もともとこの部屋で冬は足元のヒーターしか使わないので、最後にエアコンを使ったのは去年の9月あたりか。なぜそれが急に動き出したのか、わからない。風通しのいい部屋なので、夏もめったに使わない。そんな不遇なエアコンが寂しくて存在を示そうとしたのか、あるいはほとんど使われないまま自然になくなってゆく電池の反乱か。
そんなことを考えていたら5時近くになった。あらためて、私は本当に昔のものを捨てていないのだと気づく。安心したら眠くなって、いつの間にかソファで1時間ほど寝ていた。今度、昔の時計や携帯の埃を払って拭いてあげようと思った。
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