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2020年6月15日 (月)

オラファー・エリアソンを見る

コロナ禍で閉じていた場所が次々に開く。カラオケやパチンコまでOKになったが、東京都の新たな感染者はここ数日、20人を超している。このままではまた「東京アラート」もありうると思って、何を見に行くか考えた。

東京都現代美術館の「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」を選んだのは、あの都知事だといつ何を言い出すかわからないから。彼女の思いつきの一言に都の施設は従わざるをえない。いつ閉じるかわからないと思い、前から見たかったこの展覧会に行った。

エリアソンを最初に見たのは、2005年の原美術館の個展だと思う。その光と水と映像を使った展示に魅了された。その後彼の作品は、ベネチア・ビエンナーレでの数回の展示を始めとして、横浜トリエンナーレ、フランスのヴェルサイユ宮殿やルイ・ヴィトン美術館、ソウルのサムスン・リウム美術館などで見た。

その中では2016年のヴェルサイユ宮殿の展示が個展と言えるほど大規模だった。10mを超す高い人口の滝があったり、庭の池を干しあがらせてそこに奇妙な音楽を流したりという野外展示もよかったし、黄色や黒の輪や球の鏡などが、18世紀のマリ―・アントワネットの時代の作品に混じって幻覚を作り出しているのも素晴らしかった。

今回の都現美の展示は、それに匹敵するくらい見ごたえがあった。全部で17点だが、大作は半分くらい。やはり2020年の新作の2点はこれまでにないタイプで興味深かった。《あなたに今起きていること、これから起きること》は床に3色のライトが置かれているだけなのに、人が動くことで光と影のドラマが生まれる。シンプルで奥が深い。

展覧会の題名でもある《ときに川は光となる》は真ん中に水が入った丸い空間があり、少しずつ水が動くとそれがライトに反射して頭上のスクリーンに12個の映像が動き始める。これまたほんの小さな動きが世界を動かす自然の摂理のよう。

最後に《ビューティ》(1998)があった。これは霧状の水に光を当てて虹を作り出すエリアソン初期の作品で、原美術館で見入った記憶があった。この作家はこの頃から水と光を使ってもう1つの自然を作り出してきたのだと思う。

そのほか、《おそれてる?》(2004)は、ぶら下がったガラスの3つのリングによって光が壁に輪を作るもので、ヴェルサイユ宮殿で見た「輪」のテーマ。《人間を超えたレゾネーター》もこのテーマで、1つの輪の奥にいくつもの輪ができる幻想世界だ。

もちろん、いくつかのデッサンや研究室のような石などの物質の羅列もまた、どこか宇宙的でいい。現代作家だとだいぶ前に世田谷美術館で個展を見たジェームス・タレルに近い精神性や抽象性だろうか。現代美術では今年一番の展覧会であることは間違いない。ニュースを見たら昨日東京都では47名の感染者があったという。早く行かないと、見られなくなるかもしれない。

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