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2020年7月 6日 (月)

『一度も撃ってません』を楽しむ

阪本順治監督の『一度も撃ってません』を劇場で見たが、いやあ、おもしろかった。最初から最後までクスクス笑いながら見た。もともとはGW前に公開のはずだったがコロナ禍で延期になり、2か月以上遅れてようやく映画館にやってきた。

実を言うと石橋蓮司が売れないハードボイルド作家を演じる、ということ以外は全く知らずに見た。たぶん予告編も見ていない。ところが見始めると、作家・市川の妻役が大楠道代、市川が行く怪しげなバー「Y]には岸部一徳演じる元ヤメ検のヘンなオヤジ・石田や、昼間は立ち食い蕎麦を茹でる桃井かおり演じる元ミュージカル女優のひかりがいる。

もうこのバーの会話を聞くだけでおかしい。特に桃井かおりがその天真爛漫の躍動感で圧倒的な存在感を見せる。この4人が最初から最後まで出てくるが、これに加えて小さな役で個性豊かな俳優が続々と出てくる。

佐藤浩市は定年間際の市川の担当編集者で、「Y」で若手に引き継ぎをする。妻夫木聡は身を隠して鉄工所に勤める殺し屋で彼が殺す投資詐欺師が江口洋介。敵対する暴力団の幹部に柄本明、下っ端に渋川清彦、彼らが依頼する中国人ヒットマンが豊川悦司。みんな妙に生き生きしている。

豊川悦司がヘンな日本語で「Y」に現れるシーンは本当におかしい。それでどこか本物風でもある。どの場面も部分だけ見たら、ハードボイルドそのものでばっちり決まっている。主人公役の石橋蓮司も真夜中に帽子をかぶってバーに現れてウィスキーを飲み、気前よく多めに払う感じなどなかなか。

石橋蓮司は岸部一徳からヤバい情報をもらい、妻夫木聡に殺させてその細部を聞いてハードボイルド小説に仕立てようとするが、ボロが出る。家では大楠道代にコテンパンにやられ、バーでは若い編集者に送りつけた小説を全面的に貶される。そもそも石橋のハードボイルド作家名は「御前零児」。

個人的に唯一残念だったのが、豊川悦司と石橋蓮司の対決の場面で、あれはもっとほかの見せ方があってもよかったのでは。凝ったセットも含めて「昭和」の時代をたっぷり楽しんだが、今の若い人が見ておもしろいかどうか。「ハードボイルド」風のメタ映画感は響くと思うが、これらの俳優たちの映画をたくさん見てきたからこそ楽しめるのかも。

 

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