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2020年7月 9日 (木)

国立映画アーカイブで『婚約三羽烏』を見る

国立映画アーカイブが再開し「松竹第一主義 松竹映画の100年」という特集が始まったと聞くと、とにかく一度行きたくなった。島津保次郎監督の『婚約三羽烏』(1937)を見た。すべて日時座席指定で当日券なし、前日までチケットぴあで販売とのことで、前日に買った。

本来ならば「キャンパスメンバーズ」の教員で無料となるが、これは障碍者用と共に当日朝から配布するという。これだと確実に入れるかわからないので学生はともかく私は使えない。先日行った国立新美術館では招待券があったが、無料の時間指定券を事前に買えたのに。

国立新美術館はetixでスマホにQRコードが送られるが、こちらのチケットぴあは一般520円にプラスして110円の発行手数料を払い、わざわざセブンイレブンに行って紙チケットを印字してもらうという旧式。同じ「国立美術館」という組織なのにどうしたのだろう。

それはともかく、映画は楽しかった。別に傑作と言うのではないが、銀座を舞台に「松竹三羽烏」と呼ばれた佐野周二、佐分利信、上原謙が繰り広げる恋愛コメディだ。この恋愛劇に高峰三枝子や三宅邦子が加わり、斉藤達雄や河村黎吉、飯田蝶子といった芸達者が加わって、みんなが楽しそうにお手軽なセットで演じている。

この「三羽烏」が、就職試験で鉢合わせて無事三人とも合格し、入社後は社長令嬢を巡って火花を散らすというもの。加村(佐野周二)は順子(三宅邦子)とタバコ屋(そのおかみが飯田蝶子)の2階に同棲しているが、いつまでたっても加村が仕事をしないので順子は彼のためを思って横浜に別居する。

そこに就職試験(これがまたバカバカしい)で出会った三木(佐分利信)が居候を始める。三木は髭面で試験に現れるツワモノで、自分を名前ではなく番号で呼んだと怒る。彼には東北の田舎に女がいて、ある時突然銀座の店に訪ねてくる。一番上品そうな谷山(上原謙)は金持ちで、既に許嫁がいる。

要は相手が決まっている3人が就職して高峰三枝子演じる社長令嬢を狙うが失敗し、元の鞘に収まるという話。彼らが就職する会社が「人絹」を作る会社で、路面店も持っている。3人はまずこの店舗の勤務となるが(店長が河村黎吉)、たぶん当時の最新のデパートを真似した感じの何ともモダンで、来る女性たちもみんなお洒落。

この映画が公開されたのは、1937年7月14日。その1週間前の7日には日中戦争の発端となる盧溝橋事件が起きている。昭和初期のモボ、モガの最後の輝きかもしれない。個人的には島津保次郎監督なら『隣の八重ちゃん』(34)や『兄とその妹』(39)がずっといいが、この作品の一部でつなぎがうまくいかないのはたぶん欠落部分がある気がした。

それにしても、やはり大画面でフィルムの映写音を聞くのはいい。

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