ようやく『女帝 小池百合子』を読む
買ってあった石井妙子著『女帝 小池百合子』をようやく読んだ。5月に出てから話題で、20万部を超したという。私は同じ著者が書いた『原節子の真実』に対して少し疑問を持ったこともあり、なかなか読み始める気にならなかった。小池氏本人を毎日テレビで見ている不快感もあった。
小池百合子都知事がその父親ともどもいかに怪しいかという話は、1980年代後半に最初の職場でカイロの日本大使館に勤務した先輩から聞いたことがあった。アラビア語はインチキでカイロ大学の主席卒業は真っ赤なウソだということも。
だから今回、彼女がカイロで一緒に住んだ女性の話などを読んでも、「やっぱりそうだったのか」としか思わなかった。むしろ読んでいて一番思ったのは、「昔はこんな人がよくいた、いた」という思いと、日本の男性中心社会が彼女のようなモンスターを作り上げたのだという感慨だった。
多くは貧しい出身で、たった一人で社会でのし上がろうとする。言うことが怪しく、嘘ばかりつくが、いつの間にか自分の中でもそれが本当になってしまう。結局はいつも自分のことしか考えていない。そして力のある者、近づくと得をしそうな者にはそろりと近づいて、いつの間にかそれなりの地位を得てしまう。時には近づいた相手の地位を奪ってしまう。
この恐るべき底力は、「平成」というよりは、「昭和」にふさわしい。裸一貫から苦労を重ねていつの間にか大企業にしてしまった創業者のような。彼女の父・勇二郎の場合は最後まで怪しい貿易商だったが、彼女はその行先がニュースキャスターであり、政治家だった。
もちろんそれを支えたのは日本の男社会である。エジプトでほとんど大学にいかずに4年遊んで過ごした女性が帰国後に「日本人初のカイロ大学主席卒業」と言い張るのをそのまま信じて、マスコミは騒ぎ立てる。サダト大統領にインタビューした(実はほとんど中身のない)記事が「朝日」などの新聞に載る。日本テレビのカイロ取材に同行し、日テレの「竹村健一の『世相講談』」のアシスタントとなる。
マスコミに出まくり、テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」のメインキャスターとなる。彼女は常にマスコミ各社の上層部に支持者を作った。それから細川護熙と出会い、政治家への道を歩む。この本の冒頭の写真ページには、彼女が細川や小沢一郎、小泉純一郎といった大物の側近として仕えている写真が並んでいる。
大手マスコミも大物政治家も、みんな彼女が取り入ってくるのを喜び、盛り立てた。彼女は用がなくなったと思ったら、細川も小沢も小泉も捨てて、批判を始める。だから一度仕事をした人には誰にも信用されない。
けれど今は都知事だし、最近また再選された。私は安倍総理や麻生副総理の発言はいつもひどいと思うけど、この本を読むと小池百合子の性格の悪さというか、恐ろしさに比べたら子供じみているように思えてきた。
この本には具体的に「あるある」「おやおや」というおかしなネタがたくさんあるので、続きは後日書く。
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