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2020年8月16日 (日)

『黒の魂』を配信で見る

ここに書いたように、アップリンクのサイトの「Help The配給会社プロジェクト」でオンリー・ハーツ提供のアブデラティフ・ケシシュ監督『クスクス粒の秘密』(2007)を見た。これは一度1490円払うとオンリー・ハーツの30本が3カ月見放題なので、今月末の期限内にもう1本と選んだのがイタリア映画『黒の魂』。

フランチェスコ・ムンズィ監督の『黒の魂』は、2014年のベネチアのコンペで見ていた。この監督の映画は初めてだったが、南イタリアのカラブリアの山村に奥深く根付くマフィア達の姿を描く、暗く静かな映像に震撼した記憶があった。日本ではイタリア映画祭での上映後、オンリー・ハーツがDVDのみ販売したが、今ではこのサイトのほかアマゾンなどの配信で見ることができる。

私はどうもやくざ映画とかマフィア映画に妙に惹かれる。何となく血が騒ぐのは、半分やくざのような人々と付き合いのあった父親譲りかもしれない。今月末公開のマルコ・ベロッキオ監督『シチリアーノ 裏切りの美学』でも、ここに書いたように大いに盛り上がった。

『シチリアーノ』は題名の通りシチリアが舞台で、ここのマフィアは「コーザ・ノストラ」(我々のこと)と呼ばれる。『シチリアーノ』でも主人公がジャーナリストに「マフィア」と呼ばれて、「コーザ・ノストラだ」と訂正するシーンがあった。

さて『黒の魂』はカラブリア州が舞台でこの地方のマフィアは「ンドランゲタ」と呼ばれる。映画は、そこの寒村で生まれて父親を殺された3兄弟を描く。長男のルチアーノはそのような家系を嫌い生家で羊を育てて静かに暮らすが、三男のルイジは麻薬の国際的な売買で儲け、次男のロッコは次男の金を元手に商売をしてミラノで裕福な暮らしをする。

この均衡が壊れるのは、ルチアーノの息子のレオがルイジに憧れてミラノに行ってから。ルイジはレオに麻薬や銃の輸送を手伝わせ、レオは有頂天になる。レオが田舎でやった不祥事を解決するために、ルイジはレオを連れて生まれた村に帰って仲間を集める。ルイジはその矢先に殺され、レオはその敵を討とうとして失敗する。

3人の小さな母親の風情がいい。すべてをお見通しでひたすら沈黙する。ルイジが死んだ時にIl sangue mio=「私の血よ!」と嘆く。前半は説明なしに多くの人々が出入りするサスペンスなのでわかりにくいが、だんだんと3人の兄弟に焦点が絞られ、ルチアーノが爆発する最後に唖然とする。

映像は全体に暗く、人々の顔をなめるように見せていく。3兄弟の個性が次第にくっきりして、濃厚な血縁に結ばれた人々の全体が明らかになってゆく。近年のマフィア映画の傑作の1本ではないか。『シチリアーノ』を見る前に見ておくといい。

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