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2020年9月11日 (金)

『ようこそ映画音響の世界へ』を見る

ミッジ・コスティン監督のドキュメンタリー『ようこそ映画音響の世界へ』を劇場で見た。一応大学で映画を教えているので、こういう内容は気になる。もちろん私が教えているのは歴史や理論で制作や実技ではないが、学ぶ学生には映画の音響を仕事にしたい者もいる。

予想通り、映画音響を学ぶ者にとっては理想的な内容だった。スピルバーグやルーカスやデヴィッド・リンチが出てきて、映画にとって音響がいかに重要かを語る。そして『地獄の黙示録』や『スターウォーズ』や『インディ・ジョーンズ』の音響デザイナーたちが、どのように音響を作っていったかを具体的に見せるのだから。

取り上げる作品も有名なので、これを見たら誰でも映画音響をやってみたいと思うのではないか。映画のなかで女性の音響デザイナーが「こんなに楽しいことをやってお金がもらえるなんて」というシーンがあったが、本当にみんな子供が遊ぶように楽しそうに仕事をしている。

アメリカの映画業界では音響の「レジェンド」と言われる人々が3人出てくる。『地獄の黙示録』『ゴッドファーザー』などを担当したウォルター・マーチは「サウンド・デザイナー」という言葉を作った第一人者。

次に『スターウォーズ』でR2-D2やチューバッカの声を作り、『インディ・ジョーンズ』や『ブレード・ランナー』を担当したベン・ハート。そして『ターミネーター』や『スターウォーズ』シリーズ、『トイ・ストーリー』『シュガー・ラッシュ』などのゲイリー・ライドストローム。

私は実はこの3人の名前さえ知らなかった。そうした「影の存在」に光を当てたのはすばらしい。見ていて、いくつか疑問もあった。このドキュメンタリーは基本的にルーカスやスピルバーグらの1970年代以降の「ニュー・ハリウッド」が中心だ。ウディ・アレンもジャームッシュも関係ない。もっと言えばアメリカ映画以外は取り上げない。

トーキーの歴史にも触れる。エディソンの説明は少し大雑把過ぎだし、最初のトーキー『ジャズシンガー』(1927)のセリフの有名な日本語字幕「お楽しみはこれからだ」が「待ってくれ。まだこれからだ」という字幕だったのは興醒めだった。

劇場は座席を半分とはいえ、平日昼間で満員だった。若者を中心に男性が多かったが、音響を学ぶ者、実際にやっている者、あるいは広く映画・映像の関係者など多かったのではないか。見ながら『サイド・バイ・サイド』(2012)という映画のデジタル化を巡るドキュメンタリーを思い出した。そういえば、あの映画で一番出ていたスコセッシが今回全く姿を現さなかったのはなぜだろうか。

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