学会のオンライン発表を聞く
私の所属する映像関係の学会の全国大会が、今年はオンラインで実施された。もともと大阪の大学で5月末に行われる予定だったが、9月に延期になり、結局オンラインでの実施が決まった。
学会は個々の発表も重要だが、まず自宅を離れて旅行することがいい。それだけで気分が変わる。そして開催する知らない大学の教室に入り、全国の大学の先生と再会して現況を語り合う。あるいは本や論文でしか知らなかった方と出会うことも楽しい。ちょっとした立ち話からいろいろなことが生まれる。
ところがオンラインだと当たり前だが誰にも会わない。全員が自宅や大学から参加する。最初にシンポジウムがあった。いつもは会場にいて、半分寝ながら聞く。あんまりつまらないと、会場を出てコーヒーを飲みにいくこともある。同じように出てきた知り合いと文句を言いながら。
ところが家で一人だと、つまらなくなると掃除をしたり、爪を切ったり。音声を小さめにしてラジオのように聞いて、おもしろそうだと画面を見る。ふと考えたら、これは退屈なオンライン授業を受けている学生の態度かもと思った。
いくつかのセッションに分かれて、分科会が始まった。あらかじめ登録していたところに入る。座長と発表者は顔と声を出すが、参加者はおおむねどちらも出さない。普通の対面の発表だと質問が出やすいが、オンラインだとなかなか質問が出ない。顔も声も出さないと、まるで無記名で参加しているかのようだから。実際は名前は画面に出ているのだが。
これはまさに大人数の講義型のオンライン授業で起きていることで、みんな顔も声も出さない。授業が早めに終わった時に「質問がある学生は残ってください」と言うと、いきなりいくつもの質問が出たことはあったが、その時も顔出しを嫌がる学生は多い。
私も今回は一度シンポジウムでチャットに質問を書いたことを除くと、全く発言をしなかった。発表をする人にとっては、無反応が一番つらいことはわかっているのだが。発言しようと思っても、画面に多くの知らない人々の名前や写真や似顔絵が並ぶなかで、ミュートを解除するのは本当に難しい。これが実際に同じ教室にいると、ある種の仲間意識ができて発言もしやすいのだが。
そんなことを考えているうちに、2日間の日程は終わった。私はオンライン授業を受ける学生の気分をたっぷり味わった。その後、どうしても気分を変えたくて映画を見に行った。「オンライン学会」もコロナ禍の夏の記憶として留めておこう。
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