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2020年9月16日 (水)

「見たいものしか見ない」日本人

昨日の「朝日」朝刊オピニオン面で菅総裁誕生を受けて「続く「安部政治」」という特集があり、3人のインタビューが載っていた。そのなかで社会学者の宮台真司氏の発言が気になった。後で「朝日」のネットを見ると「「見たいものだけ見る」政治支えた国民意識」と題したより長い発言が載っていた。

「安倍政権下で日本社会の『劣化』は予想通り進みましたが、多くの日本人は『見たいものしか見ない』。劣化の現状が認識されていません。ならば、何らかの弥縫(びほう)策で対応するよりも、加速度的に悪くなって底を打った方がいいでしょう」

 ――安倍政権の7年8カ月で、株価は上昇し、低失業率を維持しました。好景気も戦後2番目の長さで続きました。それでも「劣化」ですか。

 「安倍政権はそのように『結果』を自画自賛し、メディアもそう報じてきた。しかし『結果』を強調するならば、なぜ一部の経済指標だけに注目するのか。国民の所得は、1997年以降ほぼ一貫して低下しています。OECD(経済協力開発機構)諸国でそんな国は日本だけです。個人の生活水準の指標である1人当たりの国内総生産(GDP)は、2018年にイタリアと韓国に抜かれて世界22位になりました。日本の最低賃金の低さはOECD諸国の平均の3分の2にも満たない。失業率の低さは非正規雇用の増加で『盛った』ものでしょう。経済指標だけに注目しても、『盛れない』数字はこれだけあります」

コピペで長い引用をしたが、宮台はそのような日本社会を「疑似包摂社会」と呼び、「格差や貧困があってもそれを個人が感じないですむ社会」と説明する。そしてその典型的な例として「スターバックス」では金持ちも貧乏人も全くわからないという。

見た目の心地よさだけを見て、あちこちに広がり続ける貧困や格差や差別などに目を塞ぐ。私が大学生を見ていても、みんな仲良く楽しそうに見えるが、個別によく話すと多くが悩みを抱えている。家庭の不和や親の失業や病気や大学生活あるいは将来などなど。それを表に出さないから「連帯」はうわべだけ。就活はその典型だが、みんな一人で悩んでいて同級生に内定者が出たかと私に聞いてくる。

こうなると、20歳前後の若者と4年間もつきあう大学教師の役割は大きいように思えてきた。自分の現実をしっかり見つめることから始まり、社会の隠された嫌な真実を見て考えること。疑問や怒りを忘れず、周りに伝えていくこと。教師はそうした学生の支えになり、一緒に考えること。

そう考えると学生以前に、まず自分自身の生き方が問われるような気がしてきた。自分が「見たいものしか見ない」になっていないか、気になりだす。

 

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