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2020年10月 1日 (木)

東南アジアの実験映画を見る

今や東南アジアにはタイのアピチャートポン・ウィーラセータクンやアノーチャ・スウィーチャーゴーンポン、フィリピンのラヴ・ディアスやブリランテ・メンドーサなどの前衛的な監督が大勢いるのだから、いわゆる「実験映画」もあるに違いないと思っていた。そこで今回、イメージ・フォーラム・フェスティバルで「東南アジアエクスペリメンタル傑作選」があったので、行ってみた。

この映画祭はずいぶん前からやっていると思ったら、今年で第34回。すると最初は1986年で、私がパリで1年過ごして九州の大学を出て、のこのこ東京に出て来た年である。この映画祭は最初からブレない。日本を含む世界の実験映画を集めて上映するという姿勢は一貫している。リプチンスキーやソクーロフなどこの映画祭で最初に紹介された監督も多かった。

さて私が今回見た「傑作選」は「ヴィヴィッド・メモリーズ 鮮烈な夢」という題で、タイ、ベトナム、インド、マレーシアの4本の短編が上映された。全体の印象で言うと、突出した作品はなかったがどれもなかなか興味深かった。

タイのトゥンラポップ・セーンジャルーンの『日曜日の人々』は1930年の同名のドイツ映画にインスピレーションを得ている。これはロバート・シオドマックとエドガー・G・ウルマーが渡米前にドイツで撮った傑作ドキュメンタリーだが、こちらは現代の日曜日に楽しそうに映画を撮る若者たちを写す。

エキストラの若者は何も知らされずに楽しんでいるが、途中から撮影する人々が出てくる。のどかな牧歌的な雰囲気がどこか夢につながる感じがアピチャッポンを思わせるか。

ベトナムのヴィエット・ヴ―の『アント‐マン』は、身体に蟻が纏わりつくゲイの青年を描く。頬のほくろから蟻が出てきたり、足の下に蟻が集まっていたり。気持ち悪いと思っていたらその男性はゲイでほかの男性とくっつく。最後には放尿シーンをアップで見せた。

インドのソーラブ・フラの『ビタースウィート』は1999年に統合失調症と判断させた母を描く。動画もあるが、大半は粗い粒子の白黒やカラーの写真を繋げる。2012年に死んだ犬との生活。その後なぜか父が帰ってきて仲良く暮らす。美しかった母がどんどん老いてゆくさまを描く日記映画のようで、じんと来た。

マレーシアのアマンダ・ネル・エウの『ヴィネガー・バス』は、狂った看護師の女を描く。ピンクの制服を着ていつも食べてばかりの看護師は、入院患者を次々と殺してゆく。出産する女を殺して内蔵をぶちまけ、別の女をビニールに沈める。つまりはホラーだが、毒々しい色彩とポップなテンポが悪趣味でいい。

こうした監督がこれから劇映画を撮ると思うと、本当にこれからはアジア映画の時代だと改めて思う。この映画祭はイメージフォーラムで明日まで、10/2-5はスパイラルホールで開催。

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