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2020年9月 5日 (土)

『歓待』のおかしさ

前に書いたように、コロナ禍で始まった「ミニシアター・エイド基金」に1万円寄付をした。その特典として200本を超す「サンクスシアター」から8本を見ることができる。前に濱口竜介監督の『Passion』(2008)を見たが、今度は深田晃司監督の『歓待1.1』(2010)を見た。

このあたりの作品は夜9時からのレイトショー上映で、早寝早起きの私は当然見ることができない。それから10年がたって、コロナ禍の副産物でこんな形で配信で巡り合った。

自主映画の作りだが、後の『淵に立つ』(2016)を思わせるような構造で実におもしろい。『淵に立つ』は町工場を経営する古舘寛治と筒井真理子演じる夫妻のもとに、浅野忠信演じるかつての友人がやってきて家族を滅茶苦茶にする話だったが、『歓待』もまた山内健司と杉野希妃による夫妻のもとに変な男(古舘寛治)が闖入する。

『淵に立つ』の浅野忠信はちょっと人間ばなれした感じだったし、古舘のかつての親友という設定だった。しかし『歓待』の古舘演じる加川は最初からいかにも怪しい。そのうえいつの間にか外国人の妻を連れ込み、夜は大きな声を挙げて性交をする。

山内健司演じる幹夫は外国人の妻に誘われて寝てしまうし、杉野希妃演じる妻の夏希は加川に秘密を握られてしまう。こうして夫婦共に加川夫妻に弱みを握られると、今度は加川は不法滞在の外国人を十数人連れてくる。加川はちゃんと役所から印刷の仕事をもらってきて、それを外国人たちを使ってこなし始める。

結局は幹夫と夏希もその娘も幹夫の姉も、何となく楽しくなって夜は大騒ぎする。付近の人々は突然増えた外国人たちに心配で仕方がなかったが、誰か知らせたのか警察が踏み込む。

根本的にあり得ない話だし、古舘の風情もいかにもなので、強いメタファーを含んだ喜劇として見ることができる。30歳の監督としては上出来で、この後に彼がどんどん大きな存在になってゆくのも理解できる。

「サンクスシアター」はこうしたベテラン監督の初期作品も見られるし、まだこれからの若手の作品もある。今回のコロナ禍の寄付だけでなく、継続的に続けたらどうだろうか。2000円払って3、4本見られるような形で、作り手にお金が行く仕組みが作れたらいい。

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