『ソワレ』の「ありえなさ」について考える
外山文治監督の『ソワレ』を劇場で見た。「読売」で恩田泰子記者が絶賛していたから。「日経」の(近)による4つ星評価も気になった。小泉今日子の初プロデュース作品というのも惹かれた。
結果は私には「ハズレ」だったが、いろいろ考えた。まず思ったのは「古い」映画だと言うこと。監督は1980年生まれだが、まるで20年以上前に作られた映画のようだ。1970年代や80年代には、青春のこうした挫折を描いた映画が多かった。その頃だったら傑作と言われたのではないか。
しかし、今の世の中だと「ありえない」の一言で片づけられるかもしれない。主人公の翔太(村上虹郎)は和歌山出身で、東京で役者を目指しているが目が出ない。時々演技を生かしてオレオレ詐欺の手伝いで金を稼いでいる。そしてなぜか演劇仲間5人で和歌山の高齢者施設に行って演劇を教えることになる。
そこで働くタカラ(芋生遥)は、刑務所から出てきた父親にかつて虐待を受けたようだ。翔太が全くの偶然でタカラの家に行くと、父親はタカラに覆いかぶさっていた。そこまでが30分ほどの長いプロローグで、映画のタイトルが出る。
その後は、劇団の連中も高齢者施設もほぼ出てこない。これまでの話は何だったのかと思うと「ありえない」。そして2人の間に恋愛感情があったわけでもないし、後半それが生まれ始めるとタカラのトラウマでうまく行かない。2人の謎の逃避行が始まり、そして最後には予想通り捕まる。
逃げる途中に翔太とタカラが芝居を演じるシーンや翔太がタカラに本音をぶつけるシーンなど見どころがないわけではない。しかしそもそも翔太の演劇はどうなったのか、なぜタカラを守ろうとするのかわからない。タカラの過去はかわいそうだが、それは偶然知り合った男と逃げることで解決はしないのは明らかで「ありえない」。
冒頭に海が写り、物凄い雑音と共に翔太がオレオレ詐欺をする場面が出てくる。何だか思わせぶりだが、それは全体に繋がらない。丁寧な撮影が、どこかもったいぶったものに見えてくる。
たぶん若い人が見たら全くダメだろう。私はそこまでではないが、だんだん今風に影響されたのか、「ありえない」と思ってしまった。そう思っていたら、私より少し若い知り合いの女性から「よかった」という声が届いた。読売の恩田さんも同世代だと思うが、女性には響くのだろうか。
| 固定リンク
「映画」カテゴリの記事
- 『ディスクロージャー・デイ』のおもしろさと不可解さ(2026.10.07)
- 『ナギダイアリー』の新境地(2026.10.01)
- 『ビルマの竪琴』から『花と兵隊』へ(2026.09.27)
- 1年ぶりの海外で考えたこと:その(5)飛行機の映画(2026.10.03)


コメント